シビュラの託宣(読み)シビュラのたくせん(英語表記)Sibylline Oracles

改訂新版 世界大百科事典 「シビュラの託宣」の意味・わかりやすい解説

シビュラの託宣 (シビュラのたくせん)
Sibylline Oracles

旧約聖書偽典および新約聖書外典に含まれる書名。おそらくイランに由来し,古代ギリシア・ローマで尊重されていた女予言者シビュラ託宣をまねた偽書。ホメロス風六脚韻で記されている。前2世紀以来エジプトを中心とするディアスポラ離散)のユダヤ人と,後2世紀中葉から3世紀初頭にかけてキリスト教徒により創作,編集,加筆が行われた。3~5巻はユダヤ教部分,6~8巻はキリスト教部分,1,2巻はユダヤ教文書へのキリスト教的加筆。事後予言を含む世界史の叙述,終末時の恐ろしい審判の描写,偶像崇拝とエジプト,シリア,ローマ各国への激しい攻撃,唯一神信仰の強調などを含む。ウェルギリウスの《牧歌》でその誕生がシビュラに予言されたと記されている神童が,イエス・キリストと結合されるに及んで,キリスト教文学と芸術とにおけるシビュラの地位は著しく高まった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のシビュラの託宣の言及

【シビュラ】より

…同書によって神意をうかがったのは363年を最後とし,408年にはホノリウス帝の将軍スティリコの命で焼き払われた。なおシビュラの名を冠して現存する予言書《シビュラの託宣》は,ユダヤ教,キリスト教の編者による偽書である。【水谷 智洋】。…

※「シビュラの託宣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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