改訂新版 世界大百科事典 の解説
シュテファン=ボルツマンの法則 (シュテファンボルツマンのほうそく)
Stefan-Boltzmann's law
黒体がその表面の単位面積当り単位時間に出す放射エネルギーEは黒体の絶対温度Tの4乗に比例するという法則。すなわち,E=σT4。比例定数σはシュテファン=ボルツマン定数と呼ばれ,ボルツマン定数をk,プランク定数を2πで割ったものをħ,真空中の光速度をcとして,σ=π2k4/60ħ3c2=5.67032J/m2・s・K4である。EがT4に比例することは1879年にJ.シュテファンが述べたものであるが,その根拠は,熱した白金線の出す全放射エネルギーが1200℃では525℃のときの11.7倍になるというJ.ティンダルの実験(1875)にあり,事実,絶対温度を用いると(1473K/798K)4が11.7に近くなるのだった。しかし,白金は黒体から遠く現代の測定では11.7の代わりに18.6が得られる。黒体に対するE∝T4の理論的証明は84年にL.ボルツマンが熱力学によって与え,正しい実験的証明は97年になってF.パッシェンらが与えた。比例定数σの値の正確な決定は19世紀から20世紀の変り目の実験の目標の一つだった。σが前記のように基本定数で表されたのはM.プランクの放射公式(プランクの放射則,1900)が発見されてからのことになる。シュテファン=ボルツマンの法則は,早くから太陽表面の温度TSの推定に用いられた。かりに太陽の表面を黒体とみれば,地表の単位面積が単位時間に真上の太陽から(大気の吸収はないとしたとき)受ける全放射エネルギーの値2cal/cm2・minよりTS≅6000Kが得られる。
執筆者:江沢 洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報