シュレーバー(英語表記)Daniel Paul Schreber

改訂新版 世界大百科事典 「シュレーバー」の意味・わかりやすい解説

シュレーバー
Daniel Paul Schreber
生没年:1842-1911

S.フロイトによって記述された唯一の精神病の分析例で,妄想と同性愛の関連性を説くフロイトの妄想論に素材を提供した症例として,精神医学史に名高い人物。ライプチヒに生まれ,法学を学んでドレスデンの控訴院院長にまでなったが,50歳ころ統合失調症に罹患し,寛解期に自分の病状を書き留めて《ある神経病患者の体験記》(1903)として刊行した。フロイトは,これを精神分析の立場から検討して《自伝的に記述されたパラノイアの一症例に関する精神分析的考察》(1911)を発表した。この論文は,それまで了解不能とされていた統合失調症に対して,初めてその病態と症状形成の機制について力動的解釈を試みた点で画期的なものであった。フロイトによれば,シュレーバーの病気の根源的な葛藤は,同性愛願望とそれを克服しようとする自我との闘いにあり,被害妄想は,同性愛願望を自我が抑圧し,逆転させ,さらにそれを相手に投影する結果生まれてくるのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のシュレーバーの言及

【フロイト】より

ねずみ男)と《ある幼児期神経症の病歴より》(1918。狼男)とはともに強迫状態に関する考察,《症例シュレーバー》(1911。シュレーバー)は精神分裂病者の手記に対する精神分析的解釈の試みである。…

※「シュレーバー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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