シラガゴケ

改訂新版 世界大百科事典 「シラガゴケ」の意味・わかりやすい解説

シラガゴケ

蘚類のシラガゴケ科シラガゴケ属Leucobryum総称。世界に100種以上,うち日本に約10種が知られ,とくに暖地に多い。植物体は群生してクッション状になることが多い。葉は多層で,外部に大きな中空の透明な細胞,内部に小さな緑色の細胞がある。透明細胞は乾くと空気を,湿ると水を含むため,植物体は乾燥時には白緑色,湿潤時には淡緑色となる。ホソバオキナゴケL.neilgherrense C.Muell.は東アジアに広く分布し,日本では西日本の山地の普通種。腐植質の多い土上や樹幹の基部などに生育し,塊状の密な群落をつくる。茎は高さ2~3cm。葉は舟形で長さ3~4mm,茎から容易に脱落し再生によって新個体をつくる。ビロード状の緻密(ちみつ)な群落は美しく,庭園盆栽の下植えなどに賞用される。また保水力が大きく腐りにくいので,ミズゴケと同様に鉢植えなどの用土として用いられ,園芸店では一般にヤマゴケの名で売られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シラガゴケ」の意味・わかりやすい解説

シラガゴケ
しらがごけ
[学] Leucobryum

コケ植物シラガゴケ科シラガゴケ属の種類の総称。この属の植物は葉が茎に密につき、大形の透明細胞と、これに挟まれた小形の緑色細胞からなる。植物体が湿った状態では淡緑色であるが、乾燥すると灰白色になり、オキナゴケともいう。日本には10種ほどが知られている。

 ホソバシラガゴケL. neilgherenseはシラガゴケのなかでももっとも広く園芸的に利用される種で、園芸家の間ではヤマゴケともよばれている。山地の木の根元や土混じりの腐植土上に白緑色の半球状の塊となって生え、高さは2~3センチメートル。苔庭(こけにわ)に広く植えられるほか、鉢植え植物の保水材としても市販されている。分布は日本全国から東南アジアにかける。オオシラガゴケL. scabrumは関東地方以西の温暖地の高湿度となる場所に多くみられ、茎は5センチメートル以上の高さとなり、まばらな群落をつくる。葉の長さも1センチメートル前後と、ホソバシラガゴケよりも大形になる。

[井上 浩]

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世界大百科事典(旧版)内のシラガゴケの言及

【コケ植物(苔植物)】より


[利用]
 ミズゴケは腐りにくく吸水および保水の能力が著しいので,ランやオモトなどの植込みの材料として用いられる。一般にヤマゴケという名で市販されているシラガゴケ類も同様な目的に使われる。地上生の蘚類の群生した状態は美しいので,観賞用として庭園や盆景に利用される。…

※「シラガゴケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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