シルビウス(読み)しるびうす(英語表記)Franciscus Sylvius, François de le Boë

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シルビウス」の意味・わかりやすい解説

シルビウス
しるびうす
Franciscus Sylvius, François de le Boë
(1614―1672)

17世紀オランダの傑出した医師。ハーナウ(ドイツ)に生まれる。ユグノー教徒。ドイツ、オランダの大学に学び、バーゼル医学学位を得た。ライデン私塾を開いたのちアムステルダムに移り、1658年以降ライデン大学教授。優れた臨床教育によって全ヨーロッパから学生を集めた。

 シルビウスは化学によって人体の生理と病理を説明しようとした。このために17世紀医化学派の代表者と目されている。食物血液に変える過程発酵)で発生する酸・アルカリのバランスが崩れると病気になる、という主張に基づいて対抗療法を施し、吐剤下剤を勧めた。大脳の外側溝(シルビウス裂溝)の記載や結核結節の認識など、解剖の面でも医学史に名を残している。

梶田 昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シルビウス」の意味・わかりやすい解説

シルビウス
Sylvius, Franciscus

[生]1614.3.15. ハナウ
[没]1672.11.15. ライデン
ドイツの医師,解剖学者,化学者。本名 Franz de le Boë。 17世紀の医化学派の創始者。スイスバーゼル大学を卒業,ライデン大学の植物学,解剖学の講師となった。イヌの生体実験によって,W.ハーベイの血液循環理論を実証して名声を揚げた。 1641年から臨床に従事し,58年ライデン大学の教授となったが,名調子の講義はヨーロッパ中に有名となり,多くの学生を集めたといわれる。彼は人体内での化学的な作用を強調し,身体は酸と塩基の平衡のうえに維持されるもので,生命現象は血液中で起り,病気は化学的に説明でき,かつ治療できるとした。なお,大脳の側面が深い切れ込みで側頭葉と前頭葉に分れるが,この切れ込みはシルビウスが初めて記載したことからシルビウス溝と呼ばれている。

シルビウス
Sylvius, Jacobus

[生]1478
[没]1555.1.13. パリ
フランスの解剖学者。本名 Jacques Dubois。 A.パレ,A.ベサリウスの師。死体の解剖を直接行ない,現在の血管内色素注入法の原型を案出した。腹膜,肝,虫垂を正しくとらえ,静脈弁をシルビウス弁 Sylvius's valveと記載している。

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改訂新版 世界大百科事典 「シルビウス」の意味・わかりやすい解説

シルビウス
Franciscus Sylvius
生没年:1614-72

本名François de le Boë。医者。フランス家系だがドイツに生まれたユグノー教徒。バーゼル大学で医学の学位をとった。アムステルダムで開業したが,1658年ライデン大学教授に迎えられ,臨床実地教育で名声をあげた。有機体内の変化の過程を〈発酵〉という一般概念であらわし,有機体論者とされている。解剖知見を尊重し,結核の肺に結節を発見し,いまも脳の中脳水道,側溝,裂溝の解剖学用語に彼の名を残している。
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世界大百科事典(旧版)内のシルビウスの言及

【医学】より

…また物理的医学派の一人F.ホフマンは,身体の単位的な構成要素としての繊維という概念に達し,あらゆる機能を,この繊維の緊張・弛緩によって説明し,病気は,それぞれのゆきすぎ状態としての過緊張か低緊張,あるいは無緊張であると理論的に単純化したうえで,過緊張に対してはアヘンを,低緊張に対しては酒精(スピリッツ)を処方すべきであると主張し,多くの賛同者を得た。化学的医学派としては,パラケルススJ.B.vanヘルモントF.シルビウスらがいる。パラケルススは,身体の機能を自然界の物質の生成,変化,消滅を説明する三つの原質によって動かされるものとし,それらにより直接的に作用するものとして,鉄,水銀,アンチモン,鉛,銅,ヒ素などの金属化合物の薬用を強力にすすめた。…

【消化】より

…最後のものは,現代でいえば組織での代謝全般であり,上記の第1と第2が今日の消化,第3~第5は吸収と同化にあたる。F.シルビウスは唾液の役割に注目し,また化学の目で消化を見ることを強調した。その門からでたR.deグラーフは,膵液の意義を論じた(1664)。…

※「シルビウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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