シロアリモドキ(読み)しろありもどき(英語表記)web-spinners

改訂新版 世界大百科事典 「シロアリモドキ」の意味・わかりやすい解説

シロアリモドキ (擬白蟻)
web-spinners

シロアリモドキ目(紡脚(ぼうきやく)目)Embiopteraに属する昆虫の総称。小型な細長い昆虫で一見シロアリ類に似るのでこの名がある。口器はそしゃく口で,頭部に単眼はない。触角は細く線状で16~32節,肢の跗節(ふせつ)は3節で,前肢の第1跗節は大きく膨れ,これに紡績腺が散在し,絹糸状物質を分泌し,この糸で樹幹などに筒状の巣をつくってその中にすむ。このため紡脚類の名もある。雄には2対の翅があるが雌は無翅。尾端には1対の短い尾毛がある。体は軟弱で黒色ないし褐色である。植物質を餌とし,樹幹の古くなった樹皮菌類を食べるが,ときに生の植物の葉,地衣類などを食べるものがある。

 世界に200種近く産し,日本には次の2種が分布する。ナミシロアリモドキOligotoma saundersiiは雄は体長8mm内外。雌は10mm内外。褐色の種類で翅は灰褐色を帯びる。南西諸島,台湾,ミクロネシア,オーストラリアなどに広く分布し,樹幹や枯枝枯葉の間などに,糸を張って筒状の巣をつくりその中に生活する。コケシロアリモドキO.japonicaは体長5~9mmで雌は10mm内外である。前種に似るが翅脈構造と雄の生殖節の相違で区別する。九州鹿児島宮崎・長崎県下などに分布するが,香川県での記録もある。日本特産種で,タブやクスなどの樹幹の巣内に生活し,おもに夜間活動する。天敵として,きわめて特異な形の外部寄生バチのコケシロアリモドキコバチCaenosclerogibba japonica(シロアリモドキコバチ科)が鹿児島で発見されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シロアリモドキ」の意味・わかりやすい解説

シロアリモドキ
しろありもどき / 擬白蟻
web-spinners

昆虫綱シロアリモドキ目Embioptera(紡脚(ぼうきゃく)目)の昆虫の総称。不完全変態をする細長い小形の昆虫で、世界の熱帯地域を中心に約200種が知られ、日本には3種が生息する。コケシロアリモドキは、九州の海岸地域と奄美(あまみ)大島に分布し、地衣類などが生えた樹幹のくぼみに絹糸で巣をつくり、少数の個体が集団で生活している。タイワンシロアリモドキは、台湾から沖縄の八重山(やえやま)列島にかけて分布し、石の下や落ち葉、枯れ枝の間などに営巣する。シロアリモドキは、沖縄本島に分布の記録がある。この類最大の特徴は、前肢第1跗節(ふせつ)に絹糸腺(けんしせん)をもつことで、扁平(へんぺい)に大きくなった節の中に多数の絹糸腺があって、絹糸液は第1、第2節の下面にある剛毛の中を通って分泌される。この絹糸でテント状やトンネル状の巣をつくり、少数個体が集団生活をする。雄はときに灯火に集まり、ほぼ同じ大きさのはねをもつが、雌は一般に無翅(むし)で、巣の中で子を育てる。

[森本 桂]


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百科事典マイペディア 「シロアリモドキ」の意味・わかりやすい解説

シロアリモドキ

昆虫綱の中の1目の総称。紡脚(ぼうきゃく)目ともいう。日本に2,3種,世界から約2000種が知られる。不完全変態で,一見シロアリに似る。前肢の第1ふ節に糸腺をもち,糸をつむぎ出して筒状の巣をつくる。腹端に1対の尾角をもち,巣の中では前後に自在に移動できる。筒状の巣のなかで亜社会生活を営む。

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