改訂新版 世界大百科事典 「シンプロントンネル」の意味・わかりやすい解説
シンプロン・トンネル
Simplon-Tunnel
スイスのブリークとイタリアのイゼーレ間にある並列した2本の単線型鉄道トンネル。1898年着工し,工事中の換気,湧水処理,事故時の対策に役だつように,お互いの間隔が17mで200mごとに連絡坑をもつ先進導坑(幅3.4m,高さ2.4m)2本を掘削し,うち1本を拡幅し1906年に完成させた。延長は19.803kmで,アルプスのレオネ山の山腹を貫くため土かぶりも2150mと厚く,地質は片麻岩で硬く,強大な地圧,山はね(岩片が飛び散る現象),最高56℃の地熱,温泉,大湧水(800l/s)などに遭遇し,工事は難航した。複線化のための2本目は6年後の12年から着手,それまで放置されていた導坑を拡幅して22年に開通している。延長は19.823kmで,完成以来約70年間,世界で最長の山岳トンネルとして君臨していたが,上越新幹線の大清水トンネル(延長22.221km)の出現でその座を譲った。
執筆者:岩田 敏雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報