ジアスターゼ(読み)じあすたーぜ(英語表記)diastase

翻訳|diastase

精選版 日本国語大辞典 「ジアスターゼ」の意味・読み・例文・類語

ジアスターゼ

〘名〙 (Diastase) 多糖類を分解する酵素。一八三三年フランスのパヤンとペルソが麦芽から分離することに成功して最初の酵素製品となり、特に、高峰譲吉が米麹菌から創製した製品はタカジアスターゼと呼ばれている。発酵工業消化剤に広く用いられる。アミラーゼ。ジアスタス。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三「何でも大根卸の中にはヂヤスターゼが有るとか云ふ話し」

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デジタル大辞泉 「ジアスターゼ」の意味・読み・例文・類語

ジアスターゼ(〈ドイツ〉Diastase)

麦芽から得たアミラーゼ酵素製品の最初のもので、消化促進剤として使用
[類語]酵素アミラーゼペプシン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジアスターゼ」の意味・わかりやすい解説

ジアスターゼ
じあすたーぜ
diastase

デンプン分解酵素剤で、アミラーゼの日本薬局方名。麦芽から製したもので、α(アルファ)-アミラーゼ、β(ベータ)-アミラーゼを含み、デンプンを分解してマルトースデキストリンにする。消化酵素剤として繁用されており、消化不良、食欲不振に健胃散や炭酸水素ナトリウム重曹)などの制酸剤と配合して用いられる。高峰譲吉の創製した「タカジアスターゼ」は米麹(こめこうじ)菌から抽出されたもので、アミラーゼのほかにタンパク分解酵素をも含む。ジアスターゼの製剤には、ジアスターゼ重曹散、複方ジアスターゼ重曹散、複方ロートエキス・ジアスターゼ散などがある。

[幸保文治]

『飯沼信子著『高峰譲吉とその妻』(1993・新人物往来社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ジアスターゼ」の意味・わかりやすい解説

ジアスターゼ
diastase

デンプンを分解する酵素に用いられた名称で,1833年に,フランスのパヤンAnselm Payen(1795-1871)とペルソJean François Persoz(1805-68)によって麦芽から分離された。主成分アミロースを分解するアミラーゼである。なおタカヂアスターゼは,1909年に高峰譲吉がコウジカビから創製した酵素剤の商標である。
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百科事典マイペディア 「ジアスターゼ」の意味・わかりやすい解説

ジアスターゼ

デンプン,グリコーゲンを麦芽糖とデキストリンに加水分解する酵素。1833年フランスのA.パヤンとJ.F.ペルソによって麦芽より分離され,α‐およびβ‐アミラーゼ(アミラーゼ)が主成分。消化促進剤として,消化不良,各種の消化機能障害に広く用いられる。なお1909年高峰譲吉はコウジカビからタカヂアスターゼ(商品名)を創製。
→関連項目消化薬麦芽

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジアスターゼ」の意味・わかりやすい解説

ジアスターゼ
diastase

デンプン分解酵素が A.ペイアンと J.ペルソによって最初に麦芽から抽出された際 (1833) ,これに与えられた名。酵素の初期の研究史で主要なものの一つであり,また酵素名の語尾にアーゼ-aseをつける慣行は,ここから始っている。タカジアスターゼは,コウジカビから得たジアスターゼ製品に,高峰譲吉の名前を組合せた命名。ジアスターゼの主体はアミラーゼであることが明らかとなり,ジアスターゼの名は,現在では歴史的なものとなった。

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栄養・生化学辞典 「ジアスターゼ」の解説

ジアスターゼ

 (1) アミラーゼの旧称.(2) 麹カビなどのアミラーゼの粗精製品で,消化剤などとして利用されるもの.

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化学辞典 第2版 「ジアスターゼ」の解説

ジアスターゼ
ジアスターゼ
diastase

[同義異語]アミラーゼ

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ジアスターゼ」の解説

ジアスターゼ

デンプンを分解する酵素。薬剤では胃薬などに含有。「アミラーゼ」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内のジアスターゼの言及

【アミラーゼ】より

…アミロースのように枝分れのないものは完全に消化するが,アミロペクチンやグリコーゲンのように枝分れのあるものではその直前で反応が停止する。なお,ジアスターゼという名前が以前デンプンの消化酵素として使用されていたが,現在ではこの名前は麦芽やコウジカビから調製された粗酵素標品すなわち各種の消化酵素の混合物に対して使われる。アミラーゼはジアスターゼの主成分である。…

【酵素剤】より


[加水分解酵素類の消化薬としての応用]
 この目的にはさまざまの動植物起源,微生物起源のデンプン,タンパク質,脂肪などに対する加水分解酵素が使われる。一般的なものとしては,ウシやブタの膵臓から抽出したパンクレアチン(デンプン,タンパク質消化を主とし,脂肪消化作用ももつ),各種のジアスターゼ類(発芽中のオオムギ,コウジカビなどからのデンプン消化酵素が主体),パパイアの果汁からのパパイン(タンパク質消化酵素)などがよく知られている。また,乳糖不耐性の乳児(小腸に固有の消化酵素であるラクターゼの遺伝的欠損によってミルク中の乳糖が消化されず,下痢を起こしやすい)に対する補充療法剤としてのβ‐ガラクトシダーゼ(ラクターゼと同様に乳糖を消化しうる酵素)もこのカテゴリーに入る酵素剤である。…

【消化薬】より


[消化酵素剤]
 現在多数の製品が市販されているが,これらは次のように大別することができる。(1)動物性消化酵素 ペプシン,パンクレアチンなど,(2)植物性消化酵素 ジアスターゼ,パパインなど,(3)微生物性消化酵素 タカヂアスターゼ(商品名),サナクターゼなど,(4)配合消化酵素剤 各種のタンパク質分解酵素,炭水化物分解酵素,脂肪分解酵素の組合せ,ならびに健胃薬や胆汁酸を配合した製剤。 (1)動物性消化酵素のペプシンは,胃に存在するプロテアーゼで,消化薬としてはウシまたはブタの胃粘膜から抽出したペプシンに乳糖を混合した含糖ペプシンが用いられる。…

【ダイコン(大根)】より

…また,切干しにしたり,葉を干して干葉(ひば)として米飯の増量材にするなど,日本人の食生活を多面的にささえてきた食品であった。成分上の特徴としては,根部に消化酵素アミラーゼ(ジアスターゼ)とビタミンCを多量に含有し,葉部にはカロチンが豊富である。このアミラーゼとビタミンCは熱に弱いので,ダイコンおろしなどにしての生食がよい。…

※「ジアスターゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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