ジストニア(読み)じすとにあ(英語表記)dystonia

翻訳|dystonia

デジタル大辞泉 「ジストニア」の意味・読み・例文・類語

ジストニア(dystonia)

筋緊張を調節する大脳基底核の機能障害により、身体の一部または複数の部分の筋肉が不随意に収縮し、全身または身体の一部にねじれ・硬直痙攣けいれんなどが生じる運動障害。不随意運動の一。原因が不明の原発性ジストニア、脳血管障害などの後遺症として起こる続発性ジストニアに大別される。また、発症する部位によって、全身性ジストニア局所性ジストニアなどに分類される。局所性ジストニアには、文字を書こうとすると手や腕の筋肉が異常に収縮する書痙しょけい両眼の眼輪筋(目の周囲の筋肉)が不随意に収縮し、まぶたを自由に開けなくなる眼瞼がんけん痙攣、首の筋肉が異常に収縮して頭が傾いた状態になる斜頸、喉頭や声帯の筋肉に発症し声が出しにくくなる痙攣性発声障害などがある。ジストニー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジストニア」の意味・わかりやすい解説

ジストニア
じすとにあ
dystonia

四肢や体幹がねじられた姿勢のまま一定時間固定されたり、またそれがけいれんのように繰り返されたりする症状。意識せずに起こることが多く、また不随意運動の結果として起こる。ジストニーともいう。1911年に初めてオッペンハイムHermann Oppenheim(1858―1919)によって報告された。出現する部位や範囲によって、局所性、全身性、および分節性、多巣性、片側性ジストニアに分類される。日本では局所性ジストニアが多く、手に局所的に現れればけいれんを伴って書字動作に困難をきたす書痙(しょけい)、頸部(けいぶ)に現れるものは首が片側に曲がった状態となる斜頸で、多くは原発性のものである。また眼瞼(がんけん)けいれんや声帯筋のジストニアによる攣縮(れんしゅく)性発声障害(けいれん性発声障害)がみられることもある。多くは大脳基底核の機能異常が原因とされ、筋緊張の調節機能が障害されて筋肉が不随意に収縮し、緊張が持続するためと考えられている。脳幹の障害や末梢(まっしょう)神経系の障害で発症することもあり、また統合失調症や躁(そう)病などの治療で抗精神病薬服用による副作用として、二次性に遅発性ジストニアがみられることもある。ほかに遺伝性(家族性)の変性疾患として小児の下肢などにみられるのは遺伝性捻転(ねんてん)ジストニア(変形性筋ジストニア)で、特発性ジストニアも遺伝によるものと考えられている。ストレスなどが原因の心因性ジストニアがみられることもある。局所性ジストニアの治療で内服薬服用による効果が認められないときは、少量のボツリヌス毒素を局所に筋肉注射して攣縮を緩和するボツリヌス療法(治療)などが用いられる。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「ジストニア」の意味・わかりやすい解説

ジストニア
dystonia

ジストニーともいう。筋肉の持続的な収縮によって異常に固定した肢位(姿勢)およびその運動。アテトーシスに似るが,収縮が体幹や体肢の近位部に生じる点で区別される。一定の肢位(たとえば起立位)をとるときに,筋緊張が異常に高まり,随意運動が妨げられ,変形した肢位に固定される。ひとつの症候群で,痙性斜頸spasmodic torticollis,ウィルソン病パーキンソン症候群など,種々の疾患にともなって出現する。また,ジストニアを呈する疾患のひとつである捻転ジストニアtorsion dystoniaあるいは変形性筋ジストニアdystonia musculorum deformansは,腰部前彎,胸部後屈,骨盤捻転,四肢の内転・内旋など,全身性のジストニアを呈し,起立時,歩行時に著しい。これらジストニアの発生機序は,確定してはいないが,大脳基底核とくに線条体の機能の異常が重視されている。治療には,抗コリレ薬,筋弛緩薬(ジアゼパム),抗異常運動薬(フェノチアジン,ブチロフェノン),抗痙攣(けいれん)薬(カルバマゼピン)などの投与やボツリヌス毒素の注射が行われる。
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世界大百科事典(旧版)内のジストニアの言及

【運動障害】より

…たとえば,線条体の病変では舞踏病のような不随意運動を生ずるが,これは運動の過多現象,すなわち過動症hyperkinesiaである。過動症にはこのほか,アテトーシスジストニーなどがあるが,いずれも意志の力では止めることのできない異常運動である。一方,同じ大脳基底核の病変でも,黒質や淡蒼球がおかされると無動症akinesiaが起こり,筋肉の力は正常であるのに,随意運動の量が減って,なかなか動けなくなってしまう。…

※「ジストニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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