ジュケイ(読み)じゅけい(英語表記)tragopan

翻訳|tragopan

改訂新版 世界大百科事典 「ジュケイ」の意味・わかりやすい解説

ジュケイ (綬鶏)
tragopan

キジ目キジ科ジュケイ属Tragopan 5種の鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。別名ツノキジと呼ばれるが,雄が求愛行動の際に頭部に二つの肉質突起を突き出すことによる。ジュケイ類は美しいので飼育家に珍重される。体長は60~70cmくらいで,くちばしは短く,翼の先端が丸く,尾は比較的短い。

 ジュケイ属の本来の分布は,ヒマラヤ山脈に沿って,西パキスタン,カシミール地方(ハイイロジュケイT. melanocephalus),ヒマラヤ山脈南縁沿い(ヒオドシジュケイT. satyra),バングラデシュ,ミャンマー北部の山地ハイバラジュケイT. blythi),インド東部から中国中央部(ベニジュケイT. temminckii),中国東部(ジュケイT. caboti)に分布していたが,生息地の破壊や乱獲などにより現在では分布域は狭まり,ハイイロジュケイ,ジュケイ,ハイバラジュケイの3種については絶滅が心配されている。ジュケイは標高1000~1500mの森林にすみ,樹上生活が多いためか,樹上のリス,カラスなどの古巣を修理して産卵する。1腹の卵数は3,4個で,雌が約30日間抱卵する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュケイ」の意味・わかりやすい解説

ジュケイ
Tragopan caboti; Cabot's tragopan

キジ目キジ科。全長 50~61cm。頭上は冠羽(→羽冠)が後ろに伸び,中央が黒く,後頭脇から後頸がオレンジ色である。眼のまわりの裸域,顎もくすんだオレンジ色。また眼の上から後頸と喉にかけてふたまたに分かれた黒い帯があり,オレンジ色部を含めて顔が歌舞伎の隈取のような模様になる。背面は赤褐色の地に淡褐色のビーズ玉が連なるような斑点模様で,この斑点は下にいくほど大きくなる。胸から腹は淡褐色。は黒く,喉に青い裸域があり,脚は肉色。通常は見えないが,頭上に 2本の淡青色の肉角があり,ディスプレイのときは喉の裸域を広げるとともにそれを立てる。中国南東部のフーチエン(福建)省コワントン(広東)省チヤンシー(江西)省フーナン(湖南)省の 600~1800mの山地に生息し,2.4~10mの樹上に営巣する。日本には飼鳥としてまれに輸入される。近縁種にベニジュケイ T. temminckii やヒオドシジュケイ T. satyra がおり,中国南部からヒマラヤにかけて分布している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュケイ」の意味・わかりやすい解説

ジュケイ
じゅけい / 綬鶏
tragopan

広義には鳥綱キジ目キジ科ジュケイ属に含まれる鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この属Tragopanの鳥はヒマラヤ山脈に沿ってパキスタンからミャンマー(ビルマ)、中国の福建省あたりまで分布し、5種がある。ただし、生息環境の破壊や乱獲などによって、どの種も現在では非常に限られた地域にしか生息していない。全長50~70センチメートル。求愛行動の際に、ツノキジの異名があるように雄の頭部に二つの肉質突起が突き出るほか、のどの青や黄の肉垂れも大きく膨らむ。羽色は緋色(ひいろ)、褐色、灰色などからなり、白っぽい円形の斑紋(はんもん)を多数もつ。標高900~3600メートルぐらいの湿潤な森林にすみ、木の実や草の種子、昆虫をとって食べる。ほかの多くのキジ類とは違って、地上だけでなく樹上でも活動し、巣も樹上につくることが多い。1年を通じて単独かつがいで暮らしていることが多く、群れになることはあまりない。

 種としてのジュケイT. cabotiは、中国の南東部に生息している。体上面は黒と褐色と赤の斑紋状、下面は褐色をしており、頭部は黒っぽい。

[樋口広芳]


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