ジョブ・カード制度(読み)じょぶかーどせいど

知恵蔵 「ジョブ・カード制度」の解説

ジョブ・カード制度

フリーターなど正社員経験の少ない人を、正社員としての就職に導くための支援制度。対象者は、ハローワークなどで「ジョブ・カード」と呼ばれる書類に職務経歴、学習・訓練歴、免許・取得資格などを記載してキャリア・コンサルティングを受け、さらに企業実習と座学を組み合わせた実践的な職業訓練を受講すれば「評価シート」が交付される。このようなプログラムへの参加を通じて、職業意識や能力などを明確にし、職業選択やキャリア形成に役立てる仕組みである。
この制度は2007年、政府の「成長力底上げ戦略(基本構想)」の中で「人材能力戦略」の取り組みの一つとして盛り込まれ、08年度から実施された。背景には、新規学卒時に正社員になれないと正社員の職を得るのが難しく、職業能力形成の機会にも恵まれないという、新卒一括採用偏重がある。「就職氷河期」に就職できなかった若者や、子育てのために離職した女性などが能力を向上させて就職できるよう支援し、安定的な雇用へ移行させる狙いがある。09年度までの2年間に、約22万8千人がジョブ・カードを取得、約9千人が雇用型訓練を受講した。10年6月に閣議決定された「新成長戦略」では、20年までにジョブ・カード取得者300万人との目標を掲げ、若者や女性の就労促進を打ち出した。
しかし、10年10月の行政刷新会議による事業仕分けで、この事業が関連するキャリア形成促進助成金とともに仕分けの対象になり、「類似事業との整理統合を図り、本来の政策目的を実現できる別の枠組みを設ける」べきだとして事業廃止の評価を下された。これに対し、政府は事業を見直しの上、継続する考えを示した。 

(原田英美  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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