スカルン(英語表記)skarn

翻訳|skarn

岩石学辞典 「スカルン」の解説

スカルン

古いスウェーデンの鉱山用語.鉄鉱床あるいは硫化鉱床に伴われる珪酸塩鉱物の脈石(gangue),または石灰に富む珪酸塩鉱物で構成された接触岩.石灰珪酸塩鉱物には石榴石,輝石,角閃石などがある.一般に鉱脈または火成岩の接触変成帯の中で,主に石灰岩が交代作用を受けて形成された岩石.ゴールドシュミットは,これを石灰岩の接触部に沿って形成されるすべてのCa-Fe-珪酸塩の岩石に拡張した[Goldschmidt : 1911].古い時代には特に石灰岩やドロマイト交代鉱床で用いられたが,その後若い時代の同様な接触変成作用で形成されたものにも使用されるようになった[Goldschmidt : 1911, Eskola : 1914].CaO, MgO, SiO2, FeO, Fe2O3など各種の成分が添加あるいは除去されて,様々な鉱物組合せのスカルンができる.特に優勢な鉱物種が含まれる場合には接頭語を付けてアンドラダイト・スカルンというように呼ばれる.スウェーデン語のskarnは汚物,不潔物,屑,ごみなどの意味.

スカルン

貫入火成岩体の周囲の接触変成帯(aureole)の中,または高度の広域変成作用の行われた地域の中にある接触変成岩である.スカルン岩に伴われる鉱体は普通は小さく不規則な形で不規則な分布をしており,鉱体は鉱石と脈石が独特の鉱物組合せをしている.代表的な鉱石には磁鉄鉱チタン鉄鉱赤鉄鉱コランダムスピネルなどが,亜鉛,鉛,錫,タングステンなどとともに含まれる.脈石鉱物は主として高温珪酸塩鉱物で,グロスラライト,アンドラダイト,ヘデンベルジャイト,トレモライト,橄欖(かんらん)石,透輝石,曹長石などで,石英および炭酸塩鉱物が伴われる[Kemp : 1907, Bateman : 1952].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「スカルン」の意味・わかりやすい解説

スカルン
skarn

石灰岩やドロストーンなどの岩石が,マグマ活動で発生する高温の水溶液(熱水)と化学的に反応し,新しく生成するケイ酸塩鉱物によって完全に置き換えられた岩石をいう。不純物を多く含む石灰岩(たとえば泥質石灰岩)などが熱変成をうけて再結晶しても,類似の岩石ができる。生成するケイ酸塩鉱物には,ザクロ石類,輝石類,角セン石類,ケイ灰石,ベスビアナイト,緑レン石などがある。熱水中に含まれる有用金属が,これらの鉱物とともに沈殿すれば鉱床となる(接触交代鉱床)。石灰岩やドロストーンがスカルン化されやすいのは,熱水と反応しやすい炭酸塩鉱物で構成されていることによる。
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化学辞典 第2版 「スカルン」の解説

スカルン
スカルン
skarn

石灰岩花こう岩の接触部に産出するカルシウムやマグネシウムのケイ酸塩岩石.構成鉱物としては,ざくろ石輝石角せん石,陽起石,緑れん石けい灰石,斧(おの)石など.変成岩の一種.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スカルン」の意味・わかりやすい解説

スカルン
skarn

接触交代鉱床または高温交代鉱床に,脈石鉱物として産する特有のケイ酸塩鉱物の集合体。柘榴石,ヘデン輝石,透輝石,ケイ灰石,ケイ灰鉄鉱,緑簾石,斧石,ベスブ石,ダトライト,小藤石,コンドロダイトなどの特有の鉱物を含む。マグマが冷却する過程の揮発性成分の多い時期末に,未固結のマグマや高温熱水溶液と周囲の石灰岩,ドロマイトとの交代作用によって形成される。スカルンの語は,中部スウェーデンの鉄鉱床の脈石に対して用いられた鉱山用語で,ろうそくの灯芯を意味する。

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世界大百科事典(旧版)内のスカルンの言及

【接触交代鉱床】より

…マグマの活動により発生する高温の鉱化流体が岩石中を移動・上昇するときに,石灰岩やドロストーンの中を通過すると化学的に反応して,これらの岩石をケイ酸塩鉱物の集合体で置き換えてしまう。このような地質現象は交代作用とよばれ,新しく生成したケイ酸塩鉱物よりなる岩石はスカルンとよばれる。この際,鉱化流体中に溶存していた鉄,銅,亜鉛,鉛,タングステン,モリブデン,スズなどの有用金属も,硫化物や酸化物として沈殿して鉱床をつくる。…

※「スカルン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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