スジイルカ(英語表記)striped dolphin
Stenella caeruleoalba

改訂新版 世界大百科事典 「スジイルカ」の意味・わかりやすい解説

スジイルカ
striped dolphin
Stenella caeruleoalba

ハクジラ亜目マイルカ科の哺乳類。世界中の温帯熱帯に生息する体長2.7mに達する典型的なイルカ。目から胸びれ肛門に向かう黒い条があるのでこの名がある。背面は青黒色,目の上から背びれに向かう幅広い淡色域があるのが特徴。くちばしは長い。歯は直径2~3mmで,上下左右に各45~50本ある。数十から数百頭,まれに1000頭を超す群れをなす。日本近海では,繁殖は周年行われるが,春秋2回の不明りょうなピークがある。妊娠期間は約12ヵ月,約1mで生まれた子は2~3ヵ月で餌をとり始め,1~3年で離乳する。離乳後は親の群れを離れて子どもだけの群れをつくる傾向があり,これは雄に著しい。6~12年,平均体長2.2m前後で性成熟する。餌料はイカ,エビ,ハダカイワシアジなどきわめて多様。伊豆沿岸各地では,追込漁法で年1万~2万頭捕獲されてきたが,1960年ころから漸減し,80年代にはほとんど壊滅した。これは乱獲によるらしい。日本では突きん棒と追込漁で年間750頭の捕獲が許可されている(1997年現在)。天敵にはシャチサメがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スジイルカ」の意味・わかりやすい解説

スジイルカ
Stenella coeruleoalba; striped dolphin

クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科スジイルカ属。体長は雄で約 2.6m,雌で約 2.5mに達する。最大体重は約 156kg。出生体長は約 1m。体色は背部が黒灰色で腹部は白色である。体側は淡灰色を呈し,胸鰭上方で,背鰭に向うものと背部後方へ向うものと2方向に分岐する。眼から肛門にかけての黒灰色の線が本種の特徴。体型は流線形でやや太い。嘴 (くちばし) と前頭部の境は明瞭。上下顎骨には左右 40~55対の小さい円錐形の歯がある。前頭部から噴気孔にかけて丸くふくらみ,噴気孔は1個。背鰭 (せびれ) は大きく,体の中央にあり先端はとがり後縁は鎌状である。雄の尾柄部は上下面のキール (稜状の隆起) が著しい。通常 100~500頭の群れで行動するが,ときには 1000頭をこえる群れをなすこともある。おもにスルメイカ類やハダカイワシ類などを捕食する。繁殖期は夏と冬。北緯 50゜を北限とし南緯 40゜を南限とする全海洋の温帯から熱帯海域に分布する。太平洋東部熱帯海域で操業される巾着網漁では,キハダの群れが本種の群れに付随して遊泳するため,混獲され現存数が減少傾向にある。日本では追込漁および突棒漁業により食用として捕獲されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スジイルカ」の意味・わかりやすい解説

スジイルカ
すじいるか
striped dolphin
[学] Stenella coeruleoalba

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目マイルカ科のハクジラ。世界の温帯、熱帯海域に生息している。日本近海では、夏には北海道の沖まで分布し、冬には紀伊半島沖まで南下する。体形は紡錘形で、くちばしがある。体色は背部が黒で、腹側は白い。目から肛門(こうもん)に向かう黒条と、目から背びれにかけてみられる淡色帯が特徴。体長は雄では2.6メートル、雌では2.5メートルに達する。歯は上下顎(がく)左右に各40~50本あり、すべて円錐(えんすい)形で生え替わらない。妊娠期間は約1年で、出生時の体長は約1メートル。出生後約半年で餌(えさ)を食べ始める。離乳年齢は1.5歳。雌雄とも約9歳で性成熟に達する。雌は性成熟後、3年に1回1子を産む。繁殖期は年に2回。数十~数千頭の群れをつくる。群れには、未成熟群と成熟群(育児群と繁殖群)がある。餌は魚類、イカ類、エビ類などで、1日に体重の約3~10%の量を摂取する。

[宮崎信之]


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