スズガモ(読み)すずがも(英語表記)scaup

翻訳|scaup

改訂新版 世界大百科事典 「スズガモ」の意味・わかりやすい解説

スズガモ (鈴鴨)
(greater)scaup
Aythya marila

カモ目カモ科の鳥。ユーラシア大陸と北アメリカの最北部で繁殖し,北半球の温帯地方で越冬する。日本には冬鳥として渡来し,全国の海岸,とくに遠浅の海岸の海上に多く生息する。また河口内陸の大きな湖沼でも少なからず見られる。餌は底生の二枚貝がおもだが,甲殻類なども食べる。貝類を殻ごと食べ,砂囊で砕くので,スズガモの砂囊は他のカモ類に比べて著しく大きくじょうぶである。全長約47cm。雌はやや小さい。雄は頭部金属光沢をもつ緑黒色で,胸は黒く,背は白色に細かい黒色の虫食斑があり,遠方からは灰色に見える。腹は白色。雌は全体に黒褐色で,額からくちばしの基部と腹が白い。群集性が強くしばしば1万を超える大きな群れをつくる。飛行の際,はばたくときに歯切れのよい金属的な音をたてる。それを鈴の音にたとえてスズガモの名がある。なお,ホオジロガモも同様な音を出すのでスズガモと呼ばれることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スズガモ」の意味・わかりやすい解説

スズガモ
すずがも / 鈴鴨
scaup
[学] Aythya marila

鳥綱カモ目カモ科の鳥。全北区に分布するが、西部旧北区と東部旧北区から北アメリカとに別亜種がいる。北アメリカにはさらに別種コスズガモも分布する。日本に渡来するものはシベリア東部、カムチャツカ半島千島で繁殖し、稚内(わっかない)市の大沼などに大群で渡り、さらに本州の浅い江湾、とくに東京湾には万以上の大群で越冬する。動物質を主食とし、アサリを好むものはまる飲みにして砕くので砂嚢(さのう)が著しく強大になっている。したがって穀類による飼育には弱い。全長約45センチメートル。雄は、頭部が緑色光沢のある黒色、胸が黒色、背は白色に波状の黒色斑(はん)があり、わきは白色。嘴(くちばし)は幅広く、先端の嘴づめのみが黒色。雌は褐色で、嘴の周りが白色である点でキンクロハジロの雌と区別される。なお和名の由来は、飛び立つときの羽音とされるが誤りで、鈴羽音を出すのは実は別種のホオジロガモである。

[黒田長久]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スズガモ」の意味・わかりやすい解説

スズガモ
Aythya marila; greater scaup

カモ目カモ科。全長 39~56cm。雌雄異色。雄は頭頸部が金属光沢のある暗緑色で,背面は白地に細かな黒色の横斑が密にあり,胸は黒く,腹は白い。雌は頭頸部,背面,胸は暗緑褐色で,額と顔の前半部および腹が白い。ユーラシア大陸および北アメリカの北部で繁殖し,日本には冬鳥(→渡り鳥)として多数渡来する。冬季,海岸の浅瀬,河口,入江,広い湖沼などにすみ,貝類やカニ類などを食べる。ときに養殖の稚貝に大害を与えることがある。(→ガンカモ類

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