スチレン・ブタジエンゴム(読み)すちれんぶたじえんごむ(英語表記)styrene-butadiene rubber

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

スチレン・ブタジエンゴム
すちれんぶたじえんごむ
styrene-butadiene rubber

第二次世界大戦前後にドイツでブナS、アメリカでGR-Sの名称で工業化された合成ゴムである。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称SBR。現在もっとも大量に生産されている汎用(はんよう)ゴムである。大部分は乳化重合によって合成される(E-SBRと略称)が、一部は溶液重合によって合成される(S-SBRと略称)。一般的なE-SBRは、スチレン(23.5%)とブタジエンを加圧下、せっけん水中に分散乳化し、過酸化物開始剤と分子量調節剤を加えて、5℃で10時間反応させ、重合停止剤や老化防止剤を加え、さらに食塩などの凝固剤を加えて分離、水洗、乾燥して生ゴムの製品とする。天然ゴムに比較して、品質が均一であり、素練りが容易で、加工しやすく、一方、加硫速度が低い。E-SBR加硫物は、天然ゴムに近い強度と優れた耐老化性、耐熱性および耐摩耗性を示すが、耐寒性・粘着性・反発弾性などが劣り、動的発熱が大きく、引裂き強度が低い。性能・加工性・コストのバランスがもっとも優れているので、自動車タイヤ、ベルト、ホースパッキング履物、その他各種工業用ゴム製品など広い用途がある。生ゴムは天然ゴム(NR)ややブタジエンゴム(BR)と混合あるいは、樹脂とブレンドする改質剤としての用途もある。S-SBRは、有機リチウム触媒によるアニオン共重合で合成される。E-SBRに比較して加工性・動的特性が優れ、屈曲亀裂(きれつ)に強く、低温特性がよい。E-SBRと同じ用途に使われるほか、低燃費・高性能タイヤの原料として注目される。スチレンを50%以上含むSBRはハイスチレンゴムとよばれ、硬質ゴム製品として靴底や床タイルなどの用途がある。乳化重合によるSBRラテックスは、紙加工、プラスチック強化や接着剤などに使われる。

[福田和吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア の解説

スチレン・ブタジエンゴム

SBRまたはスチレンゴムとも。代表的な合成ゴムで,スチレンとブタジエンとの共重合物。1930年代にドイツで開発されてブナSと名づけられ,第2次大戦中米国でGR-Sの名で大量生産された。重合時の温度によりホットラバー(約50℃で重合)とコールドラバー(約5℃で重合)に大別され,前者は後者に比べて耐寒性にすぐれる。天然ゴムより弾性,引裂抵抗は低いが耐熱性,耐油性,耐摩耗性,耐老化性はすぐれ,自動車タイヤや工業用品,履物などに広く使用されている。合成ゴムの中では,現在最も多く生産されている。
→関連項目アクリロニトリル・ブタジエンゴム

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