スマートメーター(読み)すまーとめーたー(英語表記)smart meter

デジタル大辞泉 「スマートメーター」の意味・読み・例文・類語

スマート‐メーター(smart meter)

通信機能を備えた電力計。家庭、オフィス、工場などの電力の利用状況をリアルタイムに把握することで、需要予測節電に利用される。次世代電力網スマートグリッドの中核技術の一つとされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スマートメーター」の意味・わかりやすい解説

スマートメーター
すまーとめーたー
smart meter

通信機能を備えた次世代型電力量計。家庭、オフィス、工場などで刻々と変わる電力消費量をほぼ自動的に把握し、検針員が巡回しなくても、遠方からリアルタイムで消費電力を知ることができるため「スマート(賢い)」メーターとよばれる。双方向通信機能を駆使し、電力消費量を知るだけでなく、接続した家電製品の使用電力抑制や、電力供給の機動的制御が可能。このため、発電量が季節や天候に左右されて不安定な風力や太陽光などの再生可能エネルギーが使いやすくなる利点もある。電力の流れや電力使用を最適にコントロールする次世代送電網のスマートグリッド構想や、環境にやさしいエネルギー消費を地域単位で目ざすスマートシティ構想実現のための基幹部品の一つである。

 スマートメーターにつながった家庭エネルギー管理システム(HEMS(ヘムス):home energy management system)やビル・エネルギー管理システム(BEMS(ベムス):building energy management system)が電力消費情報を受け取ってグラフなどに表示する。これを基に、家電や照明の利用を抑えて電気代を節約し、割安な電力料金プランづくりに役だてることが可能。ひとり暮らしの高齢者の見守り、不在時を避けて配達する宅配、電力料金が割安な時間での電気自動車の充電、電力不足時に節電に協力した事業所への報酬支払いといった新サービス・用途が広がっている。電力会社や電機会社だけでなく、情報技術関連企業も相次いでスマートメーター市場に参入しており、スイスの世界最大のスマートメーター関連企業ランディス・ギア(Landis+Gyr)を東芝が買収するなど、合従連衡(がっしょうれんこう)の動きが広がっている。

 スマートメーターの普及は海外で先行している。アメリカカリフォルニア州フロリダ州スウェーデン、イギリス、イタリアなどで、ほぼ全戸への導入を終えている。日本では30分ごとに電力利用量を測るスマートメーターを、東京電力が2021年(令和3)にほぼ全戸に導入し、経済産業省では2024年度までに日本全国の電力量計(メーター)をすべてスマートメーターに変更する計画を進めている。ただ、電力消費情報から帰宅時間や入浴時間を推定されるというプライバシー問題や、電磁波による健康被害に関する懸念などが課題として残っており、アメリカのカリフォルニア州などでは、導入を拒否する権利が認められている。

[矢野 武 2022年9月21日]

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知恵蔵 「スマートメーター」の解説

スマートメーター

通信機能を備えた電力メーターで、電力会社と需要者の間をつないで電力使用量などのデータをやり取りしたり、需要先の家電製品などと接続してそれを制御したりすることができるもの。再生エネルギー活用の要として注目されるスマートグリッド(次世代送電網)を整備・構築していく上で、送電網や配電網の自動化と共に必要不可欠のものとされている。
古くから、電力メーター検針の経費を大きく削減するものとして、検針を自動的に行うAMR(Automatic Meter Reading)やそのデータを電力会社に送信するシステムについて開発が進められていた。また、年々増加する電力需要によって送配電網の充実が迫られたこと、近年になってエネルギー問題や環境負荷が叫ばれたことから、風力や太陽光などの不安定な発電も配電網に組み込まれるようにもなった。それらを安定して運用していくためには、自立分散的に制御するスマートグリッドが不可欠のものとなっている。このため、AMRのみならず、家庭内の機器の消費量を監視・制御したり、小規模発電設備からの電力を受け入たり、電気自動車の蓄電池の充放電をコントロールしたりして、送配電を最適化するHEMS(home energy management system)の機能も取り入れたシステムが求められている。これらの機能を電力消費や小規模発電を行う家庭などでコントロールするのがAMI(Advanced Metering Infrastructure)である。このために、従来の電力メーターに替えて設置する機器をスマートメーターという。
欧米諸国ではスマートメーターの普及が進んでいるが、日本も2011年の東日本大震災を機に必要性が強く求められるようになった。例えば、スマートメーターが設置されていれば計画停電に際して、信号機や病院だけを除外するということも可能となるばかりか、節電のための綿密な制御を自動的に行って、停電を未然に回避することも可能となる。また、太陽光発電など新エネルギーを電力網へ受け入れることも容易になる。20年には、全世界で10億台が稼働するようになるとの見込みもあり、産業界からも将来性が期待されている。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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