スリランカ・ダム紛争(読み)すりらんかだむふんそう

知恵蔵 「スリランカ・ダム紛争」の解説

スリランカ・ダム紛争

スリランカ政府軍とLTTEが一層対立を強める要因になった水利権をめぐる紛争。2006年7月にLTTEが支配する北東部のトリンコマリーにある潅水用ダムの水門を閉鎖したことがきっかけ。政府が発表した水供給計画がLTTE支配地域の利害に反していることへの抗議だったが、これによって政府支配地域の1万5000世帯(約6万人)に水が行き渡らなくなった。農作物が枯れるなど悪影響が深刻になったため、政府は「人道的作戦」としてダム周辺を警備するLTTEに対し、空爆や地上部隊の動員を始めた。戦闘は泥沼化して周囲に拡大し、わずか10日余りで両者で計300人前後が死亡し、多くの住民が避難した。事態を打開するため、02年の停戦合意を仲介したノルウェー政府の特使がLTTEと交渉。水門開放に合意したが、現地に入ったLTTEと停戦監視団を政府軍が砲撃情勢はさらに悪化する気配となった。支配地域内に自前の警察機構や徴税の仕組みなどを持つLTTEは、水利についても独自の管理を主張する。しかし、政府はLTTEの水利管理を認めず、対立は根深い。

(竹内幸史 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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