セイボウ(読み)せいぼう

改訂新版 世界大百科事典 「セイボウ」の意味・わかりやすい解説

セイボウ (青蜂)
ruby wasp

膜翅目セイボウ科Chrysididaeの昆虫総称,またはその1種。世界に1500種以上産し,いずれも金属光沢が美しい。寄生性で,主としてトックリバチ類,ドロバチ類,ハナバチ類,ハキリバチ類など泥や筒などに巣をつくるハチに寄生する。例外として,イラガの繭の中の幼虫に寄生するイラガセイボウChrysis shanghaiensisがいる。日本産のハチの中でいちばん大きいオオセイボウStilbum cyanurumを指すこともある。体長は12~20mm。体は紫藍色ないし青藍色の金属光沢をもち美しい。ヨーロッパ,アジア,アフリカ,オーストラリアなどに広く分布する。多くの亜種に分かれ,日本のものはS.c.pacificumという。成虫は8月ころ花にくる。雌はスズバチの巣に穴をあけて,中の幼虫に産卵する。

 そのほか日本には,ミドリセイボウChrysis lusca,ホソセイボウC.galloisi,リンネセイボウC.ignitaなど数十種が分布している。以前このハチはドロバチ類やハナバチ類の巣に産卵し,中に貯蔵された青虫クモなどを食べていると思われcuckoo waspともいわれたが,ドロバチ類やハナバチ類の幼虫か前蛹(ぜんよう)を食べていることが明らかにされた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セイボウ」の意味・わかりやすい解説

セイボウ
せいぼう / 青蜂

節足動物門昆虫綱膜翅(まくし)目セイボウ科Chrysididaeの昆虫の総称。和名は「青色をしたハチ」という意味であるが、体は青、緑、赤、紫などの金属光沢がある美しいハチの一群である。学名はギリシア語で「金色」を意味する。世界に広く分布し、体長2~20ミリメートルの寄生バチで、体の皮膚は強くキチン化して堅く、ものに驚くと体を二つに折って擬死をする性質がある。暑い日中によく飛翔(ひしょう)する。腹部の尾端(第3環節)は丸く突出して、いくつかの歯(2~6歯)をもち、この数が分類上の特徴になっている。第1齢幼虫は活発で闘争性がある。おもな種類には、トックリバチ科、ハキリバチ科などのハチに寄生するヨツバコセイボウChrysis ignita、イラガの幼虫に寄生するイラガイツツバセイボウC. shanghaiensisルリジガバチに寄生するミドリイツツバセイボウC. lusca、トックリバチ類に寄生するオオセイボウStilbum cyanurumなどが知られている。

[立川哲三郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セイボウ」の意味・わかりやすい解説

セイボウ
Chrysididae; ruby-tailed wasp; cuckoo wasp

膜翅目セイボウ科の昆虫の総称。一般に小型のハチで,体は緑,青,藍,紫,赤やこれらの色の組合わさった色で,美しい金属光沢がある。硬いキチン質の皮膚は強い点刻におおわれる。腹節は普通3節であるが,2,4または5節のものもある。腹部背面は強くふくらみ,一方腹面はへこみ,驚くと腹部を胸部の下に折り曲げて体を球状にする。産卵管は長いが望遠鏡の内筒のように腹部内に引込まれ,通常は腹部内へ収納される。毒針はない。翅脈は単純で肘室を形成しない。他の狩人蜂ミツバチの巣内の幼虫に寄生するが,イラガイツツバセイボウ Chrysis shanghaiensisだけはイラガの蛹に寄生する。世界に約 1500種,日本に数十種を産する。

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