セティ1世(読み)セティいっせい(英語表記)Seti I; Sethos I

改訂新版 世界大百科事典 「セティ1世」の意味・わかりやすい解説

セティ[1世]
Sethi Ⅰ

古代エジプト第19王朝2代目の王。在位,前1304ころ-前1290年ころ。王朝の始祖ラメセス1世の子。〈アマルナ革命〉の後遺症からの本格的な再建を目ざし,即位後直ちにアジア遠征を再開し,パレスティナ,南シリアの回復にほぼ成功した。国内でもアマルナ時代に削除されたアメンをはじめとする神名の復原,カルナック神殿大列柱室やアビドスのオシリス神殿などの建造や再建を大規模に推進した。〈王家の谷〉でセティ1世が埋葬されている王墓(第17号墓)は王墓中最大規模を誇り,新王国時代の葬礼文書をほとんど網羅し,芸術性に富む優美な浮彫をよく保存する壁面装飾とともに〈王家の谷〉を代表する王墓とされる。王族の女性が埋葬された〈王妃の谷〉は,王による母后サトラーの埋葬が最初である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セティ1世」の意味・わかりやすい解説

セティ1世
セティいっせい
Seti I; Sethos I

古代エジプト第 19王朝2代目の王 (在位前 1318~04) 。ギリシア名セトス1世。パレスチナを回復し,ヒッタイトと戦ってその南侵を防ぎ (のち和約を結ぶ) ,リビア人や地中海民族の侵入を退け,紅海地方の金鉱を採掘した。またイクナートンが損傷した建造物の修復,カルナックのアモン大神殿の多柱室,アビドスのオシリス神殿,ルクソール西岸の葬祭殿を建てるなど,衰勢のエジプトを復興させた。「王陵の谷」にある彼の墓は大規模で,壁面や柱に刻まれた彩色浮彫は有名。

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世界大百科事典(旧版)内のセティ1世の言及

【アビドス】より

…遺跡は中央の墓地をはさんで,北のオシリス神殿,南の空墓群に分かれ,墓地は古代よりの盗掘で損傷著しいが,1899‐1903年のピートリーの発掘をはじめ調査がくり返され,初期王朝時代の泥章・小牌・石碑,中王国時代の供養碑など重要史料が発見されている。オシリス神殿は完全な廃墟であるが,空墓のうちセティ1世建立のもの(オシレイオンとよぶ)とその神殿,ラメセス2世建立の神殿は,建築プランと壁面の彩色浮彫を比較的よく保存している。【屋形 禎亮】。…

※「セティ1世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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