センサー(読み)せんさー(英語表記)sensor

翻訳|sensor

精選版 日本国語大辞典 「センサー」の意味・読み・例文・類語

センサー

〘名〙 (sensor) さまざまな物理量、音・光・圧力・温度などを検知、検出する素子。広義には、それらの素子を利用して計測、判別する機能を備えた装置。
※唇に微笑心に拳銃(1970)〈大藪春彦〉誘惑「感知子(センサー)によって混合気をコントロールする」

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デジタル大辞泉 「センサー」の意味・読み・例文・類語

センサー(sensor)

人間の感覚に代わり、温度・圧力・磁気・光・ガス・超音波電磁波などを検知・検出する器具。電気信号に変換するものが多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「センサー」の意味・わかりやすい解説

センサー
せんさー
sensor

生物学用語の感覚器のsensoriumと同じくラテン語のsēnsusからつくられた工学用語。検出器などと訳す場合もあるが、適切な訳語は定まっていない。単に信号検出器signal detector, pick upにとどめるか、信号変換器signal convertor, transducer、さらには信号伝送装置、つまり信号あるいは情報の処理装置の入口までに広げるか、その範囲の取り方に広狭の差異があるからである。デジタル温度計を例にとれば、温度をサーミスターなどにより検出し、電気信号に変える役目をする部分がセンサーに相当する。すなわち、センサーは、ある目的を達成するためのシステムまたは装置のための情報の取入れ口として機能するものである。

 人間は外界からの刺激を五感を介して受け入れて、その信号を脳へ送り、脳からの指令により筋肉を動かしている。したがって人間の社会生活において五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚(きゅうかく)、および味覚)が不可欠であるように、科学技術の世界においてもこれらに対応するセンサーの果たす役割は貴重である。

 頭脳はコンピュータと対応しているが、センサーは外界からの信号をコンピュータへ入れるための「なかだち」ともいえる密接な関係にある。コンピュータとセンサーとの組合せ技術はロボットから宇宙を対象とするシステムまで広範に適用されている。センサーは多種多様あり、分類法も原理別、測定変量別、応用対象別などさまざまな考え方ができる。ここではできるだけ多くの観点から眺めてみることにする。

[田向 稔]

構成からみた分類

基本センサー、組合せセンサー、応用センサーとなる。温度測定に使う熱電対は基本センサーである。乾球と湿球の温度を検出し、相対湿度を測定する例を組合せセンサーとよぶ。人体が発する熱線を赤外線センサーで測定し、身体の表面温度の温度分布を陰極線管(CRT)上に表示するのは応用センサーの例である。

[田向 稔]

機構による分類

構造形、物性形に分かれる。構造形センサーは運動の法則や電磁誘導の法則を用いたもので、圧力をダイヤフラムなどで変位として取り出したあと、これに応じたキャパシタンスの変化として検出する圧力計がこの例である。構造形センサーは精度も信頼性も優れたものが得られるようになって、工業用センサーとして広く使用されている。

 物性形センサーは物質固有の物理特性を利用したものである。半導体セラミックスなどの物理的特性を用いた圧力センサー、光センサー、磁界センサー、ガスセンサー、湿度センサーがこの例である。物性形センサーは、ICや薄膜の材料と進歩した製造技術を活用した小型化と、大量生産による低コスト化が可能であり、可動部がなく、信頼性が高く、保守が簡単などの特長をもっている。家庭電器、自動車などの一般使用者向けに幅広く使用されている。

[田向 稔]

検知機能による分類

この分類には空間量、力学量、熱学量、電磁気学量、光学量、化学量、視覚、聴覚などがある。具体的には、温度、湿度、圧力、流量、回転数、ガス、光のセンサーである。これらのなかで温度センサーがもっとも多く、かつ幅広く使用されている。腕時計が温度センサーを内蔵するなど、用途も多様化している。

[田向 稔]

変換方法による分類

これは力学的、熱学的、電気的、磁気的、電磁的、光学的、電気化学的、酵素化学的、微生物学的変換作用による分類である。目新しい例としては、アモルファス(非晶質)材料の光電効果を用いた可視光センサー、バイオテクノロジー(生命工学)を応用してガス成分や微量物質を検出するバイオセンサーなどがある。

[田向 稔]

用途による分類

工業用、民生用、医療用、理化学用、宇宙用などの用途による分け方である。これらを要求される精度で考えると、民生用は、精度1~10%の範囲で使用でき、大量生産が可能で安価なものが要求されるため、ガス漏れ検知センサーのように物性形センサーが多く使用される。工業用のうち鉄または石油化学製品などの製造用として使用されるプロセス制御用センサーは0.1~1%の精度が要求され、電磁流量計のような構造形センサーが多く使用されている。これ以上の高精度を必要とするのは精密実験ないしは校正の用途であり、0.001~0.1%の領域の精度が要求され、おもに量子形や周波数形センサーが用いられる。量子形の例はSQUID(スキッド)磁束計、周波数形の例は水晶温度計がある。

[田向 稔]

材料的分類

半導体センサー、セラミックセンサー酵素センサーなど、センサーに使用するおもな材料から分類したものである。

[田向 稔]

検出信号形態による分類

アナログセンサー、デジタルセンサー、周波数形センサー、二値形センサーなどがある。測定対象の物理量がもともとアナログ量が多いため、アナログセンサーの種類および数が非常に多い。デジタルセンサーはエンコーダ式の変位センサーぐらいで数は少ない。周波数形センサーの例は渦(うず)流量計や水晶温度計がある。二値形センサーはオン・オフ二つの値を出力するもので、光電スイッチ、近接スイッチなど幅広く使われている。

[田向 稔]

原理・現象による分類

非常に多くの原理・現象がセンサーに使用されているが、ここではそのいくつかを拾い上げて解説する。

[田向 稔]

温度センサー

すでにいくつかの例を示したが、バイメタルのように古くから使用されているものから、光ファイバー使用の新しいものまで、広範に使われているもっともポピュラーなセンサーである。(1)熱電温度計は、2種類の金属導体の両端を短絡して閉回路をつくり、二つの接続点間に温度差があると回路中に電流が流れるゼーベック効果を原理としている。この電流を発生させる起電力を熱起電力といい、両端の温度差のみで決まる。2種類の金属の組合せ例として、銅とコンスタンタンクロメルアルメル、白金と白金ロジウムなどがあり、これらはすでに温度と熱起電力の関係がJIS(ジス)(日本工業規格)に定められている。測定可能な温度範囲はマイナス200~プラス2000℃である。(2)抵抗温度計は、金属または半導体の電気抵抗が温度により変化する特性を利用したもので、白金線を用いたものが条件の悪い環境でも耐えられ、かつ特性が安定しているため、精密温度測定用から工業用まで広く使用されている。工業用としては0℃100オームが一般的で、これもJISに温度と抵抗値が規定されている。この場合、0~100℃で約40オームの抵抗値変化が得られる。半導体材料を用いたサーミスターは抵抗値変化が大きく、小型、安価であり、家庭電器や自動車用温度センサーとして大量に使用されている。(3)放射温度計は、物体から発生する熱放射を赤外線センサーなどにより測定するもので、非接触測定ができる特長があるため、特定の点の計測より面の計測に適している。たとえば製鉄所における炉中の温度分布、圧延工程の鉄板の温度分布、人工衛星からの地球表面の温度分布測定などに使用される。(4)トランジスタ温度計は、普通のトランジスタを温度センサーとしたもので、シリコントランジスタのベース―エミッタ間に電流を流すと、1℃当りマイナス2ミリボルト程度の温度係数をもつ。これを利用してマイナス50~プラス200℃の温度測定ができる。(5)水晶温度計は、水晶振動子の共振周波数の温度による変化を利用し、感度が1000分の1℃、安定度は1か月で100分の1℃であり、周波数出力が得られる特長がある。

[田向 稔]

圧力センサー

圧力測定は温度、流量とともにプロセス工業の分野で広く使われているほか、機械工業において圧力をオン・オフ的に検出する圧力スイッチにも用いられている。圧力センサーも種類は多く、測定圧力の大きさ、精度などにより、それぞれ適した原理のセンサーが使用されている。大気圧に近い圧力を測定する圧力センサーが用途も種類も多い。ダイヤフラム、ベローズ、ブルドン管などが圧力により変位するのを、容量変化、インダクタンス変化、周波数変化またはひずみの形で電気量に変換する。たとえば半導体圧力センサーは、シリコン単結晶の板をエッチングにより加工してダイヤフラムとし、その表面に不純物を拡散させ、ひずみを抵抗値変化として同時に検出するもので、小型、安価、かつ精度も高く応用範囲も広い。このように半導体結晶に圧力を加え抵抗変化を生ずる現象をピエゾ抵抗効果という。

[田向 稔]

流量センサー

パイプ中を流れる気体または液体の流速を測定し、これにパイプの断面積を掛けることで流量を得るものが多い。電磁流量計は、電磁誘導の法則により、パイプ中の平均流速が起電力に比例する原理を利用したセンサーである。5マイクロジーメンス(5μS/cm)以上の導電率がある液体が測定できる。流路中に障害物がない流量計として、上下水用、化学工業用、紙パルプ工業用などに幅広く使われている。超音波流量計は、パイプ外壁に取り付けた送受波器により、超音波の透過伝播(でんぱ)時間が流れに逆らう場合と流れに沿う場合とで異なることを利用し、その差から流量信号を得るものであり、用途は液体に限られる。

 渦流量計は、流れの中に棒を置き、下流に発生する渦の数から流速を得る流量計である。この現象は、旗が風にはためくことや、橋桁(はしげた)の下流に渦ができることで日常観測できる。渦流量計は、渦により棒が振動する周波数で信号が得られる特長がある。測定可能な流体は気体、液体どちらでもよく、非常に応用範囲が広い流量計である。差圧式流量計は、パイプの途中に絞りを入れ、その前後に発生する差圧が流量に比例する原理を用いたものである。絞りは、その形によりオリフィス、ベンチュリー管などとよばれ、古くから気体、液体用流量計として大量に使用されている。

[田向 稔]

磁気センサー

電磁誘導、強磁性体の特性、またはジョセフソン効果などの物理現象を用いて構成されたものが磁気センサーである。磁界を用いることで非接触に位置検出ができ、比較的悪い環境でも使用可能なため、信頼性の高いセンサーが得られる特長がある。流量センサーで実例をあげた電磁流量計、ホール素子、SQUID(super conducting quantum interference devices超電導量子干渉素子)などのセンサーがある。ホール素子は磁界センサーとして10-7T(テスラ)程度の分解能をもつほか、磁界の検出素子として用いるとブラシレス直流モーター、つまり機械的な接点がないモーターが得られる。超電導現象におけるジョセフソン効果を用いたものがSQUIDで、10-14T程度の分解能をもったきわめて高い感度の磁界センサーが得られる。ちなみに地磁気は3×10-5T程度であるから、いかに分解能が高いかがわかる。したがって、心臓や脳から発生する10-12~10-13Tの磁界が測定できるので医用センサーとしても使用できる。磁気特性が温度により変化する現象や、材料固有の特定温度において強磁性が消失し常磁性へ転移する現象を利用した温度センサーも多く使用されている。

[田向 稔]

家庭電器のセンサー

家庭電器は大別して衣食住に関係する電化製品と、オーディオ、ビデオなど教養、娯楽に関係する電子製品に分けられる。センサーの使われ方も、前者はアナログ検出が主であるのに対し、後者はオン・オフ信号の検出を目的にするものが多い。災害や犯罪などから人命や財産を守るためのシステムをセキュリティシステムとよんでおり、これが一般家庭に適用される場合をホームセキュリティとよんでいる。防災、防犯センサーが中心であり、ガス漏れ警報、超音波や赤外線を用いた侵入検知器、風呂(ふろ)の水位、湯温チェックなど身近なものはかなり普及している。

[田向 稔]

『センサ技術ハンドブック企画・編集委員会編『センサ技術ハンドブック』(1983・日本能率協会)』『『センサ百科』(1983・日刊工業新聞社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「センサー」の意味・わかりやすい解説

センサー
sensor

物体の状態や性質,あるいは物理現象に関する量に含まれる情報を,信号として取り出して伝送する系の最初の要素をセンサーという。センサーには,対象とする物理量を電気的な量などに変換するセンサー素子が不可欠であり,もっとも単純なセンサーはセンサー素子のみで構成されている。物理量の変換には各種の物理法則が活用される。場の法則を活用するセンサー素子の特性は,主としてその形状寸法によって決まるので構造形と呼ばれ,物質法則を活用する場合には使用する物質の物性に依存するので物性形と呼ばれる。対象に接触させることによって信号を取り出すセンサー素子は接触形と呼ばれ,接触させずに信号を取り出せるものは非接触形と呼ばれる。前者は確実な動作が期待できるが対象に対する負荷効果が大きく,後者は負荷効果は小さいが使用条件や環境の影響を受けやすい。

 センサーの出力信号は表示,制御,あるいは警報などに用いられるので,センサーへの入力が0のときには0であり,また一定の大きさの入力に対応して一定の出力信号が得られることが望ましい。センサーは過酷な条件下で使われることが多く,上の要請を満たすために種々の構成法がくふうされている。同種のセンサー素子を複数個組み合わせて環境の影響を相殺したり,適当な信号処理回路を組んで測定範囲を選択する方法が広く使われている。出力としてはアナログ信号が得られるものが多いが,長さや角度については直接ディジタル信号が得られるものがある。また,周波数出力のものはアナログ,ディジタル両用に使える。センサーに要求される性能の中でもっとも重要なのは信頼性であり,これを確保するため精度,再現性,時間的安定性などに配慮が加えられる。空間的に限定された領域での1種類の量のセンサーが多いが,最近は空間的分布のセンサーや2種類の量を同時に検出できるセンサーも開発されている。
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百科事典マイペディア 「センサー」の意味・わかりやすい解説

センサー

物体の状態や性質,あるいはさまざまな種類の物理量(温度,圧力など)を検知・計測する機能を備えた機器ないし装置。センサーには,対象とする物理量を電気的な量などに変換するセンサー素子が不可欠であり,センサーによる出力信号は表示,制御,あるいは警報などに用いられる。またこれまでの物理・化学的センサーとは別に,酵素や抗体などが特定の物質と特異的に反応することを利用して,有機物質の検出を効率よく行うバイオセンサーが新しく注目されてきている。
→関連項目分子素子

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知恵蔵 「センサー」の解説

センサー

温度・圧力・音などの情報を検出する素子、または装置。位置決めをするための赤外線センサー、超音波センサー、接触を検出する感圧センサー、熱いものを検出する熱センサー、角度を知るためのジャイロセンサーなど、数多くの種類がある。

(築地達郎 龍谷大学准教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「センサー」の解説

センサー

ある対象の状態を監視したり検知や計測などを行うデバイスや機器のこと。物体検知、温度、音、光、磁気、熱、振動、速度、圧力など検出対象によって種類も多数ある。

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世界大百科事典(旧版)内のセンサーの言及

【計測】より

…測定量は一般に何回か他の物理量に変換されて最後に目盛で読み取られるから,測定量は物理量の変換器の列を通って測定値になるといえる。この物理量の変換器のうちで,最先端にあって対象の測定量に関する情報をとり込む変換器を一次変換器,あるいはセンサーという。とり込まれたデータを後でコンピューターで処理するとき,コンピューターを脳に,一次変換器は感覚器官になぞらえることができるので,最近はセンサーということが多くなった。…

※「センサー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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