ゾウガメ(読み)ぞうがめ(英語表記)giant tortoise

改訂新版 世界大百科事典 「ゾウガメ」の意味・わかりやすい解説

ゾウガメ (象亀)
giant tortoise

陸生では最大のリクガメ科Testudinidaeのカメ四肢の形状や頸部の皮膚のようすがゾウに似るためゾウガメと呼ばれる。現生種には,インド洋上のセーシェル諸島アルダブラ諸島分布するアルダブラゾウガメGeochelone gigantea(英名Aldabra giant tortoise)と,太平洋上のガラパゴス諸島に分布するガラパゴスゾウガメG.elephantopus(英名Galapagos giant tortoise)の2種が知られている。日本の動物園などで見られるゾウガメの大半はアルダブラゾウガメで,甲長は最大1.2m余りになる。背甲は分厚くて重いドーム状で,柱状の太い四肢で支えられる。餌は植物質で,カメ類では最長の152年という飼育記録がある。ガラパゴスゾウガメは甲長1.2m,背甲前縁の項甲板を欠く。1835年C.ダーウィンのビーグル号航海で一躍世に知られ,島ごとに生息するゾウガメの甲の形が異なることから,ダーウィンの進化論の根拠ともなった。ガラパゴスの名がスペイン語のカメに由来するほど島の代表的な生物であったゾウガメも,採油用や捕鯨船団の食用として大量に捕獲された結果,著しく減少し,大部分がすでに絶滅あるいは危険な状態に置かれ,現在では国際保護動物として厳重な保護管理下にある。長い首をのばしウチワサボテンなどの新芽果実を食べる。卵生で,多いものは一度に20個余りを産み,長いものは孵化(ふか)に200日余りを要する。ゾウガメ類はかつて世界の熱帯に広く分布したが,哺乳類の台頭によって衰退し,現生種の分布は洋上の諸島にのみ限られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゾウガメ」の意味・わかりやすい解説

ゾウガメ
ぞうがめ / 象亀
giant tortoise

爬虫(はちゅう)綱カメ目リクガメ科に属する陸生では最大のカメ類の俗称。インド洋上のアルダブラ、セイシェル両諸島に分布するアルダブラゾウガメGeochelone giganteaと、エクアドル領ガラパゴス諸島に分布するガラパゴスゾウガメG. elephantopusのリクガメ属2種が知られる。ゾウガメの名は、ドーム状の重い甲を支える柱状の太い四肢や長い頸部(けいぶ)の皮膚のようすがゾウを思わせることに由来する。動物園などで飼育される種の大半はアルダブラゾウガメで、甲長の最大が1.23メートルに達する。餌(えさ)は植物質である。1766年にフランスの探検家マリオンによりセイシェル諸島からモーリシャス諸島に運ばれた「マリオン」ゾウガメは、152年間の飼育記録を樹立した。来島時すでに成体であったことから、寿命は180年ほどと考えられている。ガラパゴスゾウガメは背甲前縁の項甲板(こうこうばん)を欠き、生息する11の島ごとに甲の型が異なり、ダーウィンの進化論の根拠の一つともなった。15亜種に分類されるうち、過去の乱獲や持ち込まれた家畜の圧迫で、島によりすでに絶滅したものもある。残りも危険な状態に置かれ、すべて厳重な保護下にある。主食はウチワサボテンの新芽や果実である。卵生で、多いものは一度に20個余りを産み、200日余で孵化(ふか)する。

[松井孝爾]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゾウガメ」の意味・わかりやすい解説

ゾウガメ
Testudo elephantopus; Galápagos tortoise

カメ目リクガメ科。甲長 1.5m,体重 180kgにも達する巨大なカメで,ガラパゴス諸島に産し,ガラパゴスゾウガメとも呼ばれる。諸島のなかの島により少しずつ形態が異なり,いくつかの亜種に分けられている。草食性で,サボテンの茎をはじめ樹木,草本の葉,果実などを食べる。卵は直径 8cmほどの球形をしている。寿命は 180~200年といわれるが,食用や油採取用に多数捕獲されて絶滅の危機にあり,国際保護動物として保護されている。なお,ガラパゴス諸島以外にも,たとえばアルダブラ,セーシェル両諸島にアルダブラゾウガメ T. giganteaなど同属のリクガメがみられ,それらを総称してゾウガメと呼ぶこともある。

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百科事典マイペディア 「ゾウガメ」の意味・わかりやすい解説

ゾウガメ

陸生では最大のリクガメ科のカメ。甲長1mを超え,体重は250kgに達する。現生種には,インド洋のセーシェル諸島,アルダブラ諸島に分布するアルダブルゾウガメと,太平洋のガラパゴス諸島に分布するガラパゴスゾウガメの2種が知られている。背甲は厚くて丸みを帯び,暗褐〜黒色。四肢や頸(けい)部の皮膚は厚くてゾウの皮膚に似る。完全な陸生で草原などにすみ,サボテンなどを食べる。かつては多数生息していたが,乱獲のため現在は絶滅に瀕(ひん)している。
→関連項目ガラパゴス[諸島]

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