タクト(英語表記)Takt[ドイツ]

精選版 日本国語大辞典 「タクト」の意味・読み・例文・類語

タクト

〘名〙 (Takt・tact)
拍子
多情仏心(1922‐23)〈里見弴〉押入の中「いつの間にか、また組み合せた指のさきで、熱心にタクトをとってゐた」
② (合唱合奏の)指揮。また、指揮棒
※新版大東京案内(1929)〈今和次郎〉享楽の東京「一人の落語家オーケストラ指揮者に見立てて、後ろ向きに指揮棒(タクト)を手に持たせ」
③ 人づき合いの際の気転駆引きの才。手練。
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「自分の若い心を楽しませて行くタクトは十分に持ってゐた」

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デジタル大辞泉 「タクト」の意味・読み・例文・類語

タクト(tact)

機転。如才なさ。
「もうそこには葉子は―を用いる余裕さえ持っていなかった」〈有島或る女
言語学で、マンド以外の発話周囲の物や出来事を描写したり、感想を述べたりする発話。報告言語。→マンド

タクト(〈ドイツ〉Takt)

拍子。拍節
《〈ドイツTaktstockから》指揮棒。

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改訂新版 世界大百科事典 「タクト」の意味・わかりやすい解説

タクト
Takt[ドイツ]

元来は,音楽の拍,拍子,小節などを指す言葉。ラテン語による15~16世紀の音楽理論書では,時間的秩序の基本単位としてタクトゥスtactusという概念が用いられ,タクトの語源となった。今日〈タクトをとる〉といえば,拍や拍子を明示することで,音楽を指揮することと同義的な言い回しにも用いられる。また日本では,その際に用いる指揮棒(タクトシュトックTaktstockバトンbâton)のこともタクトということがある。

 多人数での演奏(合唱や合奏)の際,リーダーの動作や指示をはっきり見せようとして,棒などを利用することは古くからあったろう。しかし欧米芸術音楽において,指揮棒が特に意識され始めたのは19世紀以降,近代的指揮者の登場と進出にともなってである。大編成での演奏の際や,楽曲の組立てが複雑で音を合わせにくい場合など,棒の使用が有利といえよう。しかし棒を持たずに,腕や手の動きを中心とする動作で指揮する例も決してまれではない。柔らかさ,暖かみ,指先の表情などの点では,棒なしの方がすぐれているという意見も根強い。棒の規格などは特にないが,細く軽く,単純簡素に作られているものが多い。ちなみにマーチング・バンドの一員で,パレードなどの事実上のリーダーを務める鼓手長(ドラム・メジャーdrum major)は,指揮杖(バトンともいう)としてやや太く,飾り房や金属球をつけたはでなものを用いる。その起源は前述の指揮棒と異なり,おそらくは軍楽の歴史に求められよう。
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デジタル大辞泉プラス 「タクト」の解説

タクト

ホンダ(本田技研工業)が1980年から製造・販売したスクータータイプのオートバイ。総排気量49cc(原動機付自転車)。エンジン形式は空冷2ストローク単気筒。1980年代のスクーターブームにおける同社の代表車種として知られる。

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