タテガミオオカミ(読み)たてがみおおかみ(英語表記)maned wolf

改訂新版 世界大百科事典 「タテガミオオカミ」の意味・わかりやすい解説

タテガミオオカミ (鬣狼)
maned wolf
Chrysocyon brachyurus

顔つきがキツネに似た四肢の異常に長い食肉類でイヌ科に属する。ブラジル中・東部,ボリビア東部,パラグアイ,アルゼンチン北部,ウルグアイに分布する。体長125~132cm,尾長28~41cm,肩高74~85cm,体重20~23kg。イヌ科動物中,もっとも四肢が長く,耳は三角形で大きく,吻(ふん)が細長い。体毛は長く橙色で,頭から肩にかけての正中線に黒色長毛たてがみ状に生える。森林の縁などの草原パンパ湿地に1頭ですみ,夕方から早朝まで活動する。四肢が長いのは丈の高い草地を歩くのに適応したものといわれるが,チーターと同じ程度のスピードで走ることができるともいう。獲物パカアグーチなどの齧歯(げつし)類や小獣,鳥類トカゲ昆虫で,他に果実などの植物質も食べる。繁殖期には2頭でくらし,妊娠期間は62~66日である。南アメリカでの飼育例では7~8月に出産し,1産2~4子。寿命は飼育下で13年の記録がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タテガミオオカミ」の意味・わかりやすい解説

タテガミオオカミ
たてがみおおかみ / 鬣狼
maned wolf
[学] Chrysocyon brachyurus

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。ブラジル東部からアルゼンチン北部までのパンパにすむが少ない。南アメリカ最大のイヌ類で、体長105~125センチメートル、尾長30~45センチメートル、肩高75~87センチメートル、体重約23キログラムに達する。四肢が極端に細長く、耳介が大きく、頸筋(くびすじ)と肩に黒いたてがみがある。体は赤褐色、前肢後肢の下部は黒褐色、あごの下面、耳介の前面と尾端は白色。四肢が長いのは走るためでなく、丈の高い草やぶを歩くのに適応したものである。単独でおもに夜出歩き、果実、ウサギ、パカ、ネズミ、鳥、トカゲ、昆虫などを食べ、性質は穏和である。6~9月に2~3子を産む。たてがみと背の毛を立てて威嚇する。

今泉吉典


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タテガミオオカミ」の意味・わかりやすい解説

タテガミオオカミ
Chrysocyon brachyurus; maned wolf

食肉目イヌ科。体長 120cm,体高 80cm,体重 20kg内外。四肢が非常に長い。体は黄褐色で,四肢,鼻などは黒っぽい。頭部から肩にかけてたてがみ状の長毛が生えている。夜行性。小動物を捕食する。南アメリカ中東部を中心に分布し,単独で生活している。

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世界大百科事典(旧版)内のタテガミオオカミの言及

【絶滅生物】より

…オーストラリアのウォンバットはウシによる生息地の破壊により,タズナツメオワラビーはイヌとキツネに捕食されてともに激減した。ニューギニアのナガハシハリモグラ,キノボリカンガルーなどは狩猟により,南アメリカのメガネグマはトウモロコシの,タテガミオオカミはニワトリの害獣として駆除されて激減し,ライオンタマリンはペット,動物園の展示,医学用実験動物などに1960年ころから年間200~300頭も輸出され,1981年には生息数が100頭以下と推定される危険な状態になった。日本で絶滅寸前にあるのはイリオモテヤマネコ,ニホンカワウソ,トキ,メグロ,カラスバトなどである。…

※「タテガミオオカミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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