タマバエ(英語表記)Cecidomyiidae; gall midge

改訂新版 世界大百科事典 「タマバエ」の意味・わかりやすい解説

タマバエ (玉蠅)
gall midge

双翅目タマバエ科Cecidomyiidaeの昆虫の総称。キノコバエ科に近縁。世界から約530属4000種以上,日本からは約200種が知られている。多くは早春~初夏に成虫が出現するが,腐食性の種は秋~冬にも見られる。体長1~8mm,外観はカに似る。体は暗褐色の微粉で覆われるが,その地色は赤色ないし暗赤色のものが多い。翅脈は単純で数珠状の長い触角を有する。タマバエは虫こぶをつくるハエの意。幼虫の寄主植物は高等植物全般にわたるが,ヨモギ属,ブナ属,ヤナギ属などを寄主とする種がとくに多く,通常特定の植物の特定の部位に特異な形状の虫こぶをつくる。しかし幼虫が虫こぶをつくらない種も多く,腐食性,あるいは菌食性の幼虫は朽木樹皮落葉,キノコの中に見いだされ,サビ病菌やウドンコ病菌を食べるものもいる。そのほかアブラムシ,コナカイガラムシコナジラミキジラミダニクモに寄生したり,これらを捕食するものもいる。さらに,自分では虫こぶをつくらず,他種のタマバエの虫こぶを利用して生活するものもいる。腐食性のMiastor属,Leptosyna属,Heteropezula属などでは幼生段階で成熟し生殖を行う幼生生殖が知られている。国外では農業上の害虫としてヘシアンバエ,イネシントメタマバエ,ソルガムタマバエなどが有名。日本ではダイズサヤタマバエムギアカタマバエミカンツボミタマバエスギザイタマバエ,マツバタマバエなどの農林業上の害虫がいる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タマバエ」の意味・わかりやすい解説

タマバエ
Cecidomyiidae; gall midge

双翅目タマバエ科に属する昆虫の総称。タマバエ (蝿) とは虫 癭 (虫こぶ) をつくるハエの意であるが,昆虫学的にはこの科はむしろのほうに属する。また,虫 癭をつくらないものも多い。微小ないし小型のカに近い体制をもち,体と肢は細く,丸みのある翅をもつ。触角はじゅず状で細長く,10節以上から成り,各節に付属物がつく。単眼はない。幼虫の食性はさまざまで,アリマキ,カイガラムシ,ダニなどを食べるもの,キノコや樹皮,動物の糞を食べるもの,植物の葉を巻いてその中で育つもの,そして虫 癭をつくるものなどがある。また,この類は幼虫または蛹の状態で繁殖する幼生生殖のみられる特異な群である。ムギの害虫であるムギアカタマバエのほか,ダイズキクタマバエ,クワシントナタマバエなどの害虫が知られる。 (→双翅類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマバエ」の意味・わかりやすい解説

タマバエ
たまばえ / 癭蠅

昆虫綱双翅(そうし)目タマカ科の別称。従来の名称で、系統上の取扱いから改称された。

[伊藤修四郎]

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