タルマワシ(読み)たるまわし

改訂新版 世界大百科事典 「タルマワシ」の意味・わかりやすい解説

タルマワシ (樽廻)

太平洋大西洋地中海およびインド洋などの暖水域の海岸に広く分布している体長4~30mmくらいの小型の浮遊性端脚類で,クラゲノミ亜目タルマワシ科Phronimidaeに属する甲殻類総称。この科には2属9種ほどが知られている。体は透明,体表に赤色の斑紋を点在させていることもある。頭部は大きく円錐形をしており,赤色の大きな複眼が頭部のほとんど全域を占めており,この眼は上方下方の2部分に分かれている。胃からはケイ藻の殻など,浮遊性藻類の細胞や,橈脚(じようきやく)類などの体の破片などがつねに見られ,このようなものを食物としているらしい。この類の最大はオオタルマワシPhronima sedentariaで体長6~35mm,雌は浮遊性の原索動物サルパウミタルヒカリボヤなどのゼラチン質の被囊内に入り込み,周囲の組織を食べて,樽状の住居にしたて,その中にすみ,幼生を保育する奇習があることが知られている。近似のフロニマ・ステビンギP.stebbingiは体長3~9mmと小型で,分布はやや広く,冷水域にも見られる。タルマワシモドキPhronimella elongataは体長6~17mmで,体や脚が著しく細長い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タルマワシ」の意味・わかりやすい解説

タルマワシ
Pram bug amphipod

軟甲綱端脚目タルマワシ科 phronimidaeに属する甲殻類の総称。体長 1~2cmで,ヨコエビの基本的体制が整っており,頭部が比較的大きい。体は半透明。眼は赤色で,頭頂側面に分かれている。暖水域の外洋浮遊性であるが,雌はサルパウミタルなどの原索動物寄生し,その中で幼生を飼育する。最もよく知られている種はオオタルマワシ Phronima sedentaria で,本州中部以南の太平洋に広く分布している。(→節足動物端脚類軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タルマワシ」の意味・わかりやすい解説

タルマワシ
たるまわし / 樽廻

節足動物門甲殻綱端脚目タルマワシ科Phronimidaeに属する海産動物の総称。一般に雄は1センチメートル内外、雌は1~2センチメートルで、いずれも半透明。頭部は円錐(えんすい)形で、雄では前額部がやや突出する。目は赤く、多数の個眼からなり、頭部の大部分を占める。雄では第1触角が長いが、雌ではごく短く、また第2触角は雌雄とも著しく退化している。ほとんどの種類が暖流系外洋水にすむプランクトンで、雌は原索動物のサルパやウミタル、ヒカリボヤなどに寄生し、そこで幼生を育てる。もっともよく知られているのがオオタルマワシPhronima sedentariaで、雌の体長が3.5センチメートルに達する。本州中部以南の太平洋に分布し、魚類の天然餌料(じりょう)として重要である。

[武田正倫]


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