タングート(党項)(読み)タングート(英語表記)Tangut

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タングート(党項)」の意味・わかりやすい解説

タングート(党項)
タングート
Tangut

6世紀から 13世紀頃まで中国北西辺境に活躍したチベット系民族。自称ウォー。初め四川省北西辺から青海省方面の山地に居住し唐に服属したが,のち離反。吐蕃の強大化につれ甘粛,オルドス方面に移住。唐末にその拓跋 (たくばつ) 氏の族長拓跋思恭は黄巣の乱に唐を助けて夏州節度使を授けられ (881) ,また李姓を賜わった。また五代の紛乱に乗じてその子孫は夏州 (陝西省楡林県北西) を中心に勢力をたくわえ,宋初には一時宋に屈服したが,李継遷の代に独立体制をとり,1038年李元昊 (りげんこう) はついには西夏国を建てた。タングートはおもに牧畜を営み領内の漢人が農業を行なったが,夏州が東西交易の要路にあたったので,遼,宋,金との間の中継貿易によって富を得,これがその繁栄の経済的基礎となった。一方遼,金と宋の力の均衡を巧みに利用,大国の間に伍することができた。しかし強大なモンゴル帝国が興ると,1227年にただちに討滅され,以後は元朝内で色目人の一つとして活躍するにとどまった。ただモンゴル人がチベットをタングートと呼んだため,のちまでそれがチベットの一呼称となった。

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