ダイコンソウ(読み)だいこんそう

改訂新版 世界大百科事典 「ダイコンソウ」の意味・わかりやすい解説

ダイコンソウ (大根草)
Geum japonicum Thunb.

平地山地の木かげなどに普通な,バラ科の多年草。高さ50cm内外になり,全体に毛が多い。根出葉は羽状複葉で,側小葉は小さいが,頂小葉は卵円形で大きく,普通は浅く3裂する。茎につく葉は,ほとんど羽状にならない。花は夏から秋にかけて咲き,花冠は平開して径1.5cmほど,花弁は5枚で円形,濃い黄色,おしべは多数。果実には毛があり,先端は熟しても残っている。北海道から九州まで見られ,日本ではこの属の植物のなかで,最もひろく,また普通に見られ,中国にも分布する。ダイコンソウの名は,やや大根の葉に似た根出葉の形に由来するが,食用にはされない。しかし,全草を利尿,強精などの民間薬として,中国や日本で利用されることもある。オオダイコンソウG.aleppicum Jacq.は日本北部からユーラシア大陸にひろく分布し,同じように薬用とされる。

 ダイコンソウ属Geumは,北半球の温帯以北に50種あまりが分布し,チリーダイコンソウG.chiloense Balb.やベニバナダイコンソウG.coccineum Sibth.et Smithのように観賞用に栽植されるものがある。またミヤマダイコンソウチングルマのような高山植物も,この属のものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイコンソウ」の意味・わかりやすい解説

ダイコンソウ
だいこんそう / 大根草
[学] Geum japonicum Thunb.

バラ科(APG分類:バラ科)の多年草。高さ50センチメートル前後、全体に粗い毛がまばらに生える。葉は羽状複葉、頂小葉は大きく、倒卵形から円形、下部の側小葉は非常に小さい。6~8月、茎の先に径約1.5センチメートルで黄色の5弁花を数個開く。花期後、花柱は伸長する。果実は痩果(そうか)で毛がある。日本全土、および朝鮮半島、中国大陸の山野に普通にみられる。名は、葉がダイコンの葉に似ることからいう。全草を漢方薬では利尿剤として使用する。花柱に腺毛(せんもう)のないオオダイコンソウG. aleppicum Jacq.は本州と北海道に生え、高さ1メートルに達する。また洋種のベニバナダイコンソウはゲウム(ジューム)と称し、切り花や花壇用に栽培される。ダイコンソウ属は温帯および極地に約40種あり、花柱に関節があるのが特徴である。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]


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百科事典マイペディア 「ダイコンソウ」の意味・わかりやすい解説

ダイコンソウ

北海道〜九州,中国の林中や草地にはえるバラ科の多年草。全体に短い軟毛がある。根出葉は長い柄のある複葉で,頂小葉は広卵形,その下方に小型で不同の側小葉を数対つける。夏,枝先に径15mm内外の黄色の5弁花をまばらにつける。名は根出葉がダイコンの葉を思わせることに由来。近縁のオオダイコンソウは大型で花柄には長毛があり,北海道,本州中北部の山地草原にはえる。ミヤマダイコンソウは高山草原にはえ,花は大きく,径2〜2.5cm,頂小葉は円形で大きい。観賞用に栽培される南米原産のチリダイコンソウは花が赤い。

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