ダルフール王国(読み)ダルフールおうこく

改訂新版 世界大百科事典 「ダルフール王国」の意味・わかりやすい解説

ダルフール王国 (ダルフールおうこく)

アフリカ北東部,スーダン共和国の最西部に,17~19世紀にかけて存在したイスラム王国。ダルフールDarfurは元来地域名で,ここにはすでにニグロイド系のフール族Furのカイラ王朝が支配する小王国があったが,17世紀半ばにフール族はイスラム化した。この時の王がスレイマンソロンであるが,これを機に周辺のアラブ遊牧民をも支配する強大な王国となった。これが現在ダルフール王国として知られている。その版図はとくに東方に広がり,ナイル川を越えてアトバラ川にまで伸びていた。彼の孫アフマド・ブカルAḥmad Bukar(在位1682-1722)は,輸入した火器で武装して西方ワダイ王国を破り,軍事力の強さを示した。また学校やモスクを建てて他国から有力なイスラム教徒を迎え入れ,文化的な面での充実も図った。その後も鉱石に恵まれて鉄および銅の生産と輸出で栄えたが,その一方で奴隷狩りを行ってエジプト方面に輸出した。しかしアラブとの衝突が重なり,19世紀には人口も減少して国力が衰え,19世紀後半にはエジプトに支配された。
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世界大百科事典(旧版)内のダルフール王国の言及

【スーダン】より

…このとき,ナイル川周辺の一部アラブ系部族が白ナイル川西岸のコルドファンに移動,アラブ系遊牧民(バッカーラBaqqāra,ベダイリーヤBedaylīya等)として定着した。一方,ダルフールのマッラ山脈周辺に,フール族がバッカーラ遊牧民などを服属させ,やはりイスラム王国を名のるダルフール王国(1596‐1874)が成立,ダルフール,コルドファンからバフル・アルガザルに至る地域にかけて支配した。ダルフール王国は,牛,穀物,奴隷,象牙などを貢納として取り立て,象牙,奴隷などを各地に輸出して引換えに装身具,ビーズ,織物,武器などを輸入する交易立国であった。…

※「ダルフール王国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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