チシャノキ(英語表記)Ehretia ovalifolia Hassk.

改訂新版 世界大百科事典 「チシャノキ」の意味・わかりやすい解説

チシャノキ
Ehretia ovalifolia Hassk.

暖帯および亜熱帯の二次林に生えるムラサキ科の落葉高木。しばしば人家に植えられ,チシャキ(樗木),あるいは葉がカキに似ることからカキノハダマシなどと呼ばれている。中国地方,四国,九州,沖縄に分布し,台湾,中国大陸にもみられる。

 6~7月ころ,枝先の円錐花序多数の白い花を密生する。花冠は深く5裂し,裂片は平開して径約5mm。おしべは5本。果実は液果で黄熟し,径4~5mm。葉は倒卵形で長さ5~12cm,幅3~7cm。外形はカキに似ているが葉縁に細かい鋸歯がある。材は木目が美しく,装飾材として利用される。樹皮タンニンを多量に含み,チシャ染の染料として用いられる。若葉食用となり,キク科の野菜であるチサ(チシャ)に似た味がする。和名はこの味に由来する。液果も食べられる。

 チシャノキ属Ehretiaは旧世界の熱帯・亜熱帯域に多く,約50種がある。材は美しいものが多い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チシャノキ」の意味・わかりやすい解説

チシャノキ
ちしゃのき
[学] Ehretia acuminata R.Br.
Ehretia ovalifolia Hassk.

ムラサキ科(APG分類:ムラサキ科)の落葉高木。樹皮は小鱗片(りんぺん)になってはがれ、樹形および葉がカキノキに似るので、カキノキダマシともいう。葉は互生し、倒卵状長楕円(ちょうだえん)形で長さ10~17センチメートル、先は短くとがり、基部はくさび形、縁(へり)に浅く切れ込む鋸歯(きょし)がある。質はやや厚く、長さ1.5~3センチメートルの葉柄がある。6~7月、枝先に円錐(えんすい)花序をつくり、白色小花を多数密に開く。花冠は深く5裂し、径約5ミリメートル。雄しべは5本。果実は球形で径4~5ミリメートル、8~9月、橙黄(とうこう)色に熟す。低地に生え、中国地方西部、四国、九州、沖縄、および中国中南部などに分布する。

 材は黄白色で、建築、家具、器具材とし、樹皮および材から染料をつくる。また庭木にもする。エゴノキ科のエゴノキもチシャノキとよばれることがあり、歌舞伎(かぶき)『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』に出てくるチシャノキはエゴノキのことである。チシャノキ属は世界の熱帯を中心に約50種ある。

[小林義雄 2021年7月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「チシャノキ」の意味・わかりやすい解説

チシャノキ

カキノキダマシとも。ムラサキ科の落葉高木。本州西部〜沖縄,東アジアに分布し,庭にも植えられる。葉は倒卵形で長さ5〜12cm,カキに似ているが,細鋸歯(きょし)がある。花は6〜7月,枝先の円錐花序に多数密生する。花冠は白色で径約5mm。若葉が野菜のチシャ(レタス)に似た味がするので,この名がある。エゴノキのこともいう。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チシャノキ」の意味・わかりやすい解説

チシャノキ
Ehretia ovalifolia

ムラサキ科の落葉高木で,アジア東部の暖温帯に生じる。西日本から南西諸島の特に海岸に多くみられる。高さ数mで太い枝をもち,長さ 10cm前後の長楕円形の葉を互生し質は厚い。初夏に,大きな円錐花序を出し,径 5mmほどの小花を密につける。花冠は合弁で白色である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android