チャドクガ(読み)ちゃどくが

改訂新版 世界大百科事典 「チャドクガ」の意味・わかりやすい解説

チャドクガ (茶毒蛾)
Euproctis pseudoconspersa

鱗翅目ドクガ科の昆虫。翅の開張2~3cm。触角雌雄とも羽毛状。翅は橙黄色,前翅外縁の上方に1~2個の黒紋があり,基部から約1/3と2/3あたりに淡色の細い帯がある。成虫は7月と10月の2回発生し,よく灯火に飛来する。第1化の雄は,翅の周辺部や頭部以外の部分が黒褐色のことが多く,また雌は雄より大きく淡色である。本州,四国,九州,朝鮮半島,中国に分布する。幼虫チャ害虫として有名で,ツバキサザンカなど他のツバキ科の葉も食べる。卵で越冬し,4月に孵化(ふか)した幼虫は,葉の裏に群生し,裏面から葉肉だけを食べ,老熟すると葉縁から食べる。蛹化(ようか)するときは根際などに降りる。繭は薄い褐色で,幼虫の体に生えていた毒針毛の混ざった体毛で覆う。この毒針毛は成虫が羽化するときも腹部の鱗毛の間に混ざっているため,幼虫でも成虫でも,この毒針毛が人の皮膚に刺さると激しいかゆみとともに発疹を起こす。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャドクガ」の意味・わかりやすい解説

チャドクガ
ちゃどくが / 茶毒蛾
[学] Euproctis pseudoconspersa

昆虫綱鱗翅(りんし)目ドクガ科に属するガ。はねの開張20~30ミリメートル。はねは橙黄(とうこう)色。前翅には黒褐色鱗を散布し、2本の白線があり、翅頂下に黒紋が1、2個ある。第一化の雄ははねの縁を除いて真っ黒な個体が多い。触角の櫛歯(くしば)は、雌では短い。本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に分布する。年二化で、関東地方の平野部では、7月上旬と10月に成虫が羽化する。幼虫はチャ、ツバキ、サザンカなどツバキ科の葉を食べる。体長約25ミリメートル。黄褐色で、背面の両側に黒褐色条があり、隆起した部分から軟らかい刺毛を射出する。毒針毛をもつので、これに触れると激しいかゆみと発疹(ほっしん)ができる。繭にもこの毒毛が混ぜられるので危険である。若齢のうちは、葉の裏面に頭をそろえて群がって葉を食べるが、老熟すると分散して葉の縁から食べる。根際などに降りて褐色の薄い繭をつくり、蛹化(ようか)する。卵は葉の裏や枝に産み付けられ、母ガの尾毛で覆われる。成虫も幼虫時代の毒針毛を体につけているので、一生この針で武装していることになる。

[井上 寛]

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百科事典マイペディア 「チャドクガ」の意味・わかりやすい解説

チャドクガ

鱗翅(りんし)目ドクガ科。雌は開張30mm内外,黄色,雄は雌より小さく暗褐色。成虫は年2回,6月と10月に現れる。幼虫はチャの害虫で,ツバキ,サザンカなど他のツバキ科の葉も食べる。幼虫,成虫とも毒針毛をもち,これに触れるとドクガの場合と同様な激しいかゆみと発疹を生じる。本州以南の日本各地に分布。
→関連項目ドクガ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チャドクガ」の意味・わかりやすい解説

チャドクガ

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