チャンド(英語表記)Cand

改訂新版 世界大百科事典 「チャンド」の意味・わかりやすい解説

チャンド
Cand

12世紀末(?)の西部インドの宮廷詩人。生没年不詳。個人名チャンドのあとに,宮廷詩人の意のバルダーイーbardāīという語を付して,彼の名の一部とすることもある。アジュメールプリトビーラージと同年に生まれ,同王の宮廷にずっと仕え,戦乱のなかでともに死んだといわれる。12世紀末には群小のヒンドゥー王侯が,西方からのイスラム教徒の攻撃にさらされ,果敢にそれに抗していたが,なかでもチャンドの仕えるアジュメール国王は勇猛をもって知られていた。チャンドの叙事詩《プリトビーラージ・ラーソー》は,そういう状況を描いている。すなわち,興隆に向かうプリトビーラージをねたんだカナウジ王ジャエチャンドが,イスラム教徒勢力の盟主ムハンマド・ゴーリーと組んでアジュメールを攻め,プリトビーラージ王を捕らえるというのが,物語のあら筋である。現在伝えられるこの作品には,後世の付加部分が多く,作品自体の信憑性,作品の叙述史実の関係などについて,数々の疑問が出され,未解決のことが多い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android