チャート(読み)ちゃーと(英語表記)chert

翻訳|chert

精選版 日本国語大辞典 「チャート」の意味・読み・例文・類語

チャート

〘名〙 (chart)
① 海図。
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「葉子はチャート・ルームの壁に凭れかかって」
② 各種の情報を見やすく整理した表。図表。「フローチャート
③ 特に、過去の相場の動きを点や線でつづったグラフ

チャート

〘名〙 (chert) 珪質の堆積岩の一つ。緻密で細かい石英からなる硬い岩石。ふつう乳白色で、含まれる不純物により赤・緑・灰色などのものもある。放散虫や珪質海綿・珪藻などが深海底に集積してできたものと考えられ、古くは石器の材料としても用いられた。現在は耐火れんがの原料とされる。角岩。〔英和和英地学字彙(1914)〕

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デジタル大辞泉 「チャート」の意味・読み・例文・類語

チャート(chert)

珪質けいしつ堆積たいせきの一。緻密ちみつで細かい石英からなる硬い岩石。ふつう乳白色で、含まれる不純物により赤・緑・灰色などのものがある。放散虫や珪質海綿・珪藻などが深海底に集積してできたものと考えられ、古くは石器の材料としても用いられ、現在は耐火れんがの原料として利用。角岩。

チャート(chart)

海図。また、航空用の地図。
図表。グラフ。「フローチャート」「ヒットチャート
カルテのこと。また、病歴。
株式などの相場の動向をグラフに表したもの。テクニカル分析に使う。罫線表。足取り表。罫線けいせん

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャート」の意味・わかりやすい解説

チャート
ちゃーと
chert

珪(けい)質の堆積(たいせき)岩の一種で、ほとんど生物源のシリカSiO2二酸化ケイ素)からなる細粒・緻密(ちみつ)な硬い岩石。普通乳白色で、含まれる不純物により、灰、黒、青、緑、茶、赤などいろいろな色調のものがあるが、一般に透明感がある。硬くて割ると貝殻状断口を示すことが多い。玉髄(ぎょくずい)(カルセドニー)質あるいは細粒で等粒状の石英の集合からなり、微粒の絹雲母(きぬうんも)、緑泥石赤鉄鉱などをわずかに含んでいる。産状から層状チャートと団塊状チャートに分けられるが、層状チャートが大規模な地層として広く分布するのに対し、団塊状チャートは石灰岩などの中に小塊として産出するのみで、地質学的には層状チャートが重要である。層状チャートは、厚さ数センチメートルの珪質の単層が数ミリメートルの泥質の薄層を挟んで規則的に繰り返して積み重なった地層で、露頭では縞(しま)状にみえる。層状チャートは、かつては海水から無機化学的に沈殿して形成されたと考えられていたが、ほとんどすべてのものが珪質の骨格や殻をもつ放散虫や珪質海綿あるいは珪藻の遺骸(いがい)が集積してできたもので、一種の生物岩ということができる。礫(れき)や砂のような粗粒砕屑(さいせつ)物をまったく含まないことから、陸域から遠く離れた海洋底で形成されたと考えられている。日本では、北海道から沖縄まで、古生代後期や中生代付加体とよばれる地質体の中によくみられ、ほとんどが砕屑岩に取り囲まれた異地性の地塊をなしていることから、海洋プレートの沈み込みに伴って海側から付け加えられたものと解釈されている。代表的に発達している地域として、北部北上山地、足尾山地、関東山地、美濃(みの)、丹波(たんば)地方があげられる。チャートが再結晶してかなり純粋な石英の集合体になったものは、珪石として耐火れんがの原料として利用される。

[斎藤靖二]

『水谷伸治郎・斎藤靖二・勘米良亀齢著『日本の堆積岩』(1987・岩波書店)』『勘米良亀齢・水谷伸治郎・鎮西清高編『岩波講座地球科学5 地球表層の物質と環境』(1987・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「チャート」の意味・わかりやすい解説

チャート
chert

非常に硬く,緻密な岩石で,もっとも代表的なケイ質の生物化学岩である。不純物の量により赤,灰色などさまざまの色を呈する。微晶質ないし隠微晶質の石英やオパール,玉髄などの非晶質無水ケイ酸,あるいはそれらの混合物よりなり,SiO2が95%以上を占める。チャートにはフリント角岩など種々の同義語があり,また特定の国や地質時代のチャートだけに用いる特殊な名称も多い。日本ではかつてチャートをケイ(珪)岩と呼んだことがあったが,ケイ岩とは石英砂岩オーソコーツァイト)をさすので,現在では使用しない。チャートは地向斜堆積層の中に広く分布し,海底火山噴出物に伴って産出するものと,泥岩中に数cmから数十cmの厚さで成層して産するものとがある。量的には後者が多い。また,石灰岩やドロマイト層中には,しばしばレンズ状,卵状のチャートが産する。

 チャートの成因には,(1)ケイ質微化石が集まって石化したとする説,(2)石灰岩がSiO2によって交代されたとする説,(3)海水からSiO2が沈殿したとする説,などがある。1970年代になって走査電子顕微鏡を用いてフッ酸で腐食したチャートの表面を観察することができるようになると,大部分のチャートは放散虫遺骸やカイメンの骨針からなることがわかり,(1)の成因によるものが大部分であることが明らかにされた。またチャートの成因には深海説と浅海説とがあるが,ほとんどのチャートは陸源性砕屑物質をまったく含まないことから,深海底で形成されたと考えてよい。ただし,浅海でも同様の環境であれば形成されるという主張もある。日本の古生層とされた地層にはしばしばチャートがみられるが,それらに含まれるコノドントや放散虫化石から,一部は古生代後半のものだが,大部分は三畳紀およびジュラ紀のものであることが明らかにされている。石器時代には鏃(やじり)などの材料として使用され,また火打石として用いられた。現在はかなり純粋な石英の集合体となったものは耐火煉瓦などの原料に使用する。
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百科事典マイペディア 「チャート」の意味・わかりやすい解説

チャート

潜晶質石英,玉髄質石英など微粒な無水ケイ酸SiO2を主成分(純粋なもので95%以上)とする緻密(ちみつ)な岩石。半透明でガラスに似ており,鉄,マンガンなどの微量な不純物により青,緑,赤,黒などの色を呈する。しばしば数cm単位の層状構造(層状チャート)を示す。性状,不純物の違いなどでチャートには種々の名称があり,角岩はチャートの一種またはチャートの同義語として使われた。フリントはチョーク中のケイ質団塊のこと。成因は放散虫,海綿,ケイ藻などのケイ質生物の遺体の堆積,海水中のSiO2の沈積,粘板岩や石灰岩などの2次的変質の三つがある。チャートは古い時代ほど多く,日本では秩父中・古生層中に大量に存在する。石器時代には石器の材料に,また火打石にも用いられたが,現在では高純度のものが耐火煉瓦やガラスの原料となる。
→関連項目ケイ(珪)岩火打石フリント油層

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チャート」の意味・わかりやすい解説

チャート
chert

堆積岩の一種。緻密な潜晶質の岩石で主成分は二酸化ケイ素から成り,少量の三酸化二鉄,酸化アルミニウム,酸化マンガンなどを含む。色は変化に富み,赤,緑,黒,白色などを呈する。薄く成層した板状チャート,色が少しずつ変化した縞状チャート,無層理の塊状チャートなどや,石灰岩などの中に団塊状に含まれるものなどがある。成層したものには激しく層内褶曲を示すことがある。放散虫,海綿の骨片,コノドントなどの化石を含むことが多い。チャートには火打石,角岩など種々の同義語があり,特定の国や時代のチャートだけに適用される固有名称も多い。チャートは石器時代の人類の主要な工具であったし,17~18世紀には火打銃として軍用に使われた。成因は完全には解明されていない。海底火山活動や陸水によってもたらされたケイ酸分が,遠洋で化学的に沈積したとみられるものが多い。日本の古生界や中生界に多いが,硬く,浸食に強いので急峻な山や峡谷を形成する。各地でマンガン鉱床を伴うことがある。

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岩石学辞典 「チャート」の解説

チャート

緻密な岩石で,繊維状カルセドニイ,微結晶質または潜晶質の石英,オパールなどの一種類または数種類の形態のシリカで構成されている.不純物としては炭酸カルシウム,酸化鉄,炭素などがあり,またラジオラリアなど珪質の生物体の残りがしばしば存在する.チャートは層状に堆積するだけでなく,団塊または球状の固結物として産出する.普通のチャートは貝殻状あるいはぎざぎざの断口を示し,白色または灰色で,赤色,緑色,黄色,褐色などのものもある[Woodward : 1728, Arkell & Tomkeieff : 1953, Pettijohn : 1975].チャートには, hornstone, jasper, novaculite phthanite, silexite, white chertなど様々な名称がある.試金石(lydite)[Reuss : 1801, Cayeux : 1929].⇒試金石(2.12.6)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「チャート」の解説

チャート

グラフや図式のこと。

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