チョウ(英語表記)Chhau

改訂新版 世界大百科事典 「チョウ」の意味・わかりやすい解説

チョウ (蝶)
butterfly

全体から受ける印象でチョウは多くの人に花と同じようにうけ入れられ,美しいものの代名詞の一つでもある。翅のあざやかな色彩と花に舞う姿は陽性で,古くから美術工芸品のデザインとしてとり上げられ,文学作品にもしばしば登場するなど一般の関心も高く,昆虫の中ではもっとも親しまれているグループといえよう。こうした背景に支えられて研究の対象として興味をもつ人も多く,アマチュア研究家による新事実の紹介も今なお少なくない。それだけ情報量が多く多角的な分析も試みられていて,他の昆虫とは比較にならぬほど細かいデータが整いつつある。

一般的には今でもこの両者についての比較や区別点があげられ,とくに児童図書などには詳しく紹介されていることがあるが,その差異はすべて便宜的なものであって画然と区別することはできない。たとえば翅を開いてとまるチョウも少なくないし,昼間飛び回り花のみつを吸いにくるガも多い。両者を区別しようとする傾向は国民性による思考の差で,英語には別々の単語があるが,ドイツ語やフランス語には共通の単語(ドイツ語はFalter,フランス語はpapillon)に〈昼の〉または〈夜の〉という形容詞がつくだけで固有の単語はない。元来鱗翅目として共通する形質をもつ一元的な系統の中に昼間にだけ活動する一群(チョウ)が生じたが,他の多くの系統(ガ)と本質的に違うまでにはなっていないのが両者の関係である。

チョウの起源や系統に関する資料はきわめて少なく化石の数もごくわずかであるから,そのほとんどは推定による仮説の域をでない。現在知られている最古のチョウの化石は新生代古第三紀の漸新世から見つかっている。地史的にはウマの定向進化が始まって大型化し,ゾウの祖先とされるパレオマストドンが現れた時代でもある。つまり古生代のデボン紀に出現した昆虫類の一員としてトビケラ目に近い群から分化したと考えられる鱗翅目は,中生代ジュラ紀に特徴をそなえた一群として発展しはじめたと推定される。しかも白亜紀に入って被子植物の多様な分化が起こり,それに従って植物に依存する鱗翅目もこれに適応する形で発展したと考えられる。ただそのほとんどの種が夜行性か薄暮に活動するいわゆるガであって,チョウ(昼行性で口吻(こうふん)が長く訪花習性があると推定される)の仲間は新生代になってから昼間咲く花の増加とともに出現したと思われ,現存する科のほとんどが漸新世に存在している。

 これは植物との共進化が爆発的に起きたことを示すもので第四紀洪積世の化石は現存するチョウとほぼ一致している。したがってチョウは昆虫類の中では出現がもっとも新しく,鱗翅目の特殊化した一群であることは明白である。ただすでに多くの鱗翅類によって種ごとに特定の植物を食物として占められているために,後から分化したチョウ類はいやなにおいや味のする植物またはアルカロイドやキノンなどの有毒成分を含む植物を食べなければ生き残れない状態であったろう。その結果,特有の体臭をもつものが多く,捕食者にきらわれて生残率が高くなり,同時に昼間活動できるようになったものと思われる。

 現在知られている鱗翅目は約14万種であるが,このうちチョウ類は約1万8000種である。これはチョウに限ったことではないが,植物に依存する昆虫はその植物の生育する環境や気象条件に適応した結果独自の特徴をもち,科や属のレベルの分化が起こったと考えられる。

体のどの特徴で分類するかは学者の考えで異なるが,鱗翅目Lepidopteraの場合は前翅と後翅の翅脈の相違で区分する方法があり,前・後翅の形と翅脈がほぼ同じのものを同脈亜目Homoneura,そうでないものを異脈亜目Heteroneuraとし,おのおのをさらに細分化した。しかし現在用いられている方法は雌の生殖口が一つのものを単門類,二つに分かれているものを二門類とし,後者をさらに三つに分け計4亜目を細分するものである。4亜目は21上科に分けられ,このうちの2上科がチョウに当たる。アゲハチョウ上科Papilionoideaは11科に分けられ,セセリチョウ上科Hesperioideaにはセセリチョウ科Hesperiidaeが属している。アゲハチョウ上科に属する11の科の特徴は次のとおりである。

(1)アゲハチョウ科 大型種が多く熱帯アジアには美しいトリバネアゲハ属が分布している。一方,中央アジアや寒冷地にはウスバシロチョウ属が分布していて,幼虫は刺激をうけると頭と前胸部の間から臭角を出す。ミカン科,ウマノスズクサ科,ケシ科などをおもに食べ世界で約600種が知られている。

(2)シロチョウ科 中型種が大半を占め翅の色は白色や黄色が多いが熱帯産のものにはオレンジ色や赤い斑紋のある種もある。幼虫は緑色で,いわゆる青虫とよべるタイプが多く,アブラナ科,マメ科などの植物を好む傾向がある。全世界には約1000種が知られている。

(3)マダラチョウ科 中型から大型の種が多く細長い体に対して翅の面積が大きく飛び方はゆるやかである。幼虫は有毒植物を食べる種類が多いために成虫ともどもいやなにおいや味で,捕食者からきらわれ〈擬態〉のモデルになっているものが多い。全世界から約450種が知られている。

(4)ジャノメチョウ科 褐色を基調とする翅には眼状紋(目玉模様)のある種類が多く中型種が大半を占める。温帯から寒帯に分布するものは明るくひらけた場所を好み,温帯から熱帯に分布する種類には暗い林の中などを好むものが多い。幼虫は単子葉植物(主としてイネ科)を食べる。全世界に約2500種が知られている。

(5)フクロウチョウ科 中央および南アメリカに分布するチョウで,後翅裏面にある大きな眼状紋がフクロウの目を連想させるところからこう命名されたチョウとその近縁種約80種のグループ。ジャノメチョウ科と近縁で,幼虫は単子葉植物(たとえばバナナなど)を食べる。

(6)ワモンチョウ科 東洋区やオーストラリア区の熱帯に分布する大型または中型のチョウで,成虫は夜明けと夕方に活動し主として森林内にとどまる。系統的にはジャノメチョウに近く幼虫が単子葉植物を食べるのも共通している。全世界に約100種が知られている。

(7)モルフォチョウ科 金属光沢に輝く翅をもつ種類が多いが,なかにはまったく光沢のないものもある。系統的にはタテハチョウやワモンチョウに近く,むしろそれらの祖先型と考えられる。南アメリカの熱帯地域にのみ分布し約80種が知られている。

(8)タテハチョウ科 小型から大型まで多様なグループで熱帯に分布するものは色彩がはでなものが多い。科の特徴としては,成虫の前脚が退化変形して歩行には用いず感覚器官になっていることがある。幼虫は体じゅうにとげのはえている型とナメクジ型に二分される。全世界に約3500種が知られている。

(9)テングチョウ科 口吻を左右から包む下唇のひげが長くのびているところから日本ではテングと命名され,世界に約10種が知られていて分布はきわめて局地的である。第三紀の化石が2種発見されていて(北アメリカ),系統的には古いチョウである。幼虫がニレ科のエノキ類を食べることは共通している。

(10)シジミタテハ科 小型種が多く名まえのようにシジミチョウとタテハチョウの両方に似た形質をもっているが,よりシジミチョウに近いと考えられる。翅の形には変化が多く色彩も多様で美しいものが多い。中央および南アメリカの熱帯に分布し約1000種が知られている。

(11)シジミチョウ科 小型種の大きなグループで世界中に分布し,一部は極地で採集された例も報告されている。幼虫の食性は植物に依存するものが大部分であるが,アリと共生する種類やアブラムシを食べる肉食性のものもあって変化に富んでいる。全世界に約5500種が知られていてチョウの中では最大の科である。

 次にセセリチョウ上科に属するセセリチョウ科は今まで述べたアゲハチョウ上科のものとは形態的にも次の点で異なる。(1)触角の先端がかぎ状かとがる。(2)体が翅の大きさに比べて太い。(3)後翅基部に翅棘(しきよく)があり前翅と連動できる種がある。しかし必ずしも系統的にはガに近いというわけではなく独特な方向に分化したグループと考えるべきである。幼虫は双子葉植物を食べるものもあるが単子葉植物に依存するものが多い。全世界に約3000種が知られているが約2000種は南アメリカに分布する。

現在日本にはおよそ230種のチョウが分布している。しかしこれは領土内で明らかに生活が確認されている土着種の数で,これ以外に約40種の迷チョウが知られている。迷チョウとは外国から台風や前線に伴う風で運ばれて記録されたもの,もしくは一時的に国内で世代をくりかえしたが姿を消したもの,あるいは人為的に(無意識のうちに)もち込まれたものを指し,偶産チョウともいわれる。土着種だけで比較するとイギリス本国は約60種,台湾は約360種で日本の地理的な位置からはむしろ豊富なチョウ相といえる。

 この理由は日本列島がアジア大陸の東の端に位置し,第三紀に大陸から分離しはじめたことと氷期と間氷期のくりかえしによる気象の変化で元来分布範囲の異なるチョウがこうした外因変化につれて渡来や孤立をくりかえした結果と推定されている。すなわち日本のチョウ相はいくつかの系統で構成され,これは現在の種ごとの国外分布によって五つのタイプに分けられる。ただしこの名称は必ずしもチョウの発祥地を示すものではない。

(1)シベリア型 ユーラシア大陸北部に分布するもので,亜寒帯から温帯にみられる種類で高山チョウやヒメシジミ,キアゲハなどに代表されるチョウで約50種。

(2)アムール型 日本海の周辺地域,すなわち朝鮮半島,ウスリー,アムールなどに分布する種類で,ヒメギフチョウ,キマダラモドキ,ジョウザンミドリシジミなどがこれに当たり約60種が知られる。

(3)日本型 サハリンを含む日本列島に分布する種類であるが南西諸島の特産種(アサヒナキマダラセセリなど)もここに入れる。ギフチョウ,フジミドリシジミなど局地的分布の結果特殊化が進んだと考えられるチョウで約17種が考えられる。

(4)ヒマラヤ型 ヒマラヤ,中国西部,台湾から日本にかけてベルト状に分布する種類で主として森林にすむものが多い。クロアゲハオオムラサキ,クロヒカゲなどが該当種である。五つに分けたタイプ中もっとも古くから分布していたと推定され,日本のチョウ相の根底をなす群で大陸との関係を知るうえでも重要な手がかりになる。約40種が該当すると思われる。

(5)マレー型 アジアの熱帯域に広く分布する種類で日本を分布の北限にするものが多い。国内では暖帯か亜熱帯に限定されている。なおヒマラヤ型との関係が深く,移行も考えられる。アオスジアゲハ,キチョウ,カバマダラなどが代表種で約50種が該当種と推定される。

 こうしたタイプの設定には研究者による多少の差異があって,より多くのタイプを提唱する者もある。いずれにしても日本列島は大陸やアジア地域からの流入で現在のチョウ相は定着したが,分布はなお流動的と考えるべきであろう。

近年の研究はめざましく新事実が続々と発表されつつある。

 たとえばアサギマダラは雄が雌を見つけると追い越して前方で腹端からヘアペンシルを開く。雌がこの行動で飛び方をゆるめると雄はそのまわりを回りながら近くの葉にとまるように誘導する。葉に雌がとまると雄は横からはばたきながら交尾する。つまり一般的には雌の出すフェロモンを雄が探知し,次に視覚で相手を確かめて交尾するが,マダラチョウの仲間では雄が発香物質を出して雌を誘うパターンが認められる。

 シジミチョウ科にはアリとの関係が段階的にみられる。多くのチョウと同様に特定の食草を幼虫が食べて育つのだが,植物によってはアブラムシが群れてついていることがあり,シジミチョウ科の幼虫は葉とともにアブラムシも食べる場合がある。つまり肉食化への第1段階である。そして次に葉を食べずアブラムシを主食とするゴイシシジミの幼虫のような肉食性の種類が登場する。またアブラムシを食べずその分泌物をのむ種類(クロシジミなど)もあらわれるが,これらの雌はアブラムシの近くに産卵する習性を獲得している。しかしアブラムシの分泌物を求めに通ってくるアリと共存するためにはみずからも背面から分泌物を出す腺を開き,それをアリに与え見返りとしてアリから餌をもらう関係に発展する。これが第2段階である。

 ところが成長してアリからの餌を多く必要とすると,アリに運ばれて巣の中で蛹化(ようか)し羽化するまで過ごす。しかしこの段階はあくまで分泌物の授受であるが,ゴマシジミの幼虫の場合はじかに巣の中のアリの幼虫を捕食して成長する。この第3段階に至ると,アリにとってシジミチョウの幼虫が天敵としての性格をもったというべきである。ゴマシジミの場合はアリに会って巣に運ばれるために胸と第2腹節までの膜質部を出し,アリはここをくわえて巣に運ぶという形態的な適応まで完成している。恐らく今後も驚くべき事実が次々と明らかにされるだろう。

実生活上の関係としては農作物に害を与えることが問題になろう。モンシロチョウはキャベツなどの害虫であり,キアゲハの幼虫はニンジンやセリの葉を食べてしまう。アゲハやナガサキアゲハ,それにシロオビアゲハの幼虫はミカン科の害虫として有名であり,フジマメやソラマメの花や若い実をウラナミシジミの幼虫が食害する。しかし何といっても古くから人々を苦しめてきたのはイネツトムシとよばれているイチモンジセセリの幼虫で,イネの大害虫としてニカメイガなどとともに被害をもたらし,ときには飢饉の原因にもなった。最近こうした被害は各種の農薬の開発や作物の品種改良によって防御できるようになった。プラスの面としては吸みつ行動によってどんな種類でも花粉の媒介者としての役割は果たしているし,その美しさは情緒的に人をなぐさめている。とくに日本では世界でも例の少ない国蝶にオオムラサキを指定し,その保護に努めているし,特別天然記念物1種(ミカドアゲハ),天然記念物9種(ルーミスシジミ,ウスバキチョウなど)を国が指定しているほか県や市が指定しているチョウはたくさんあって,いずれも許可なく採集することはできない。

 一方,近年になって東京都とその周辺で韓国産のホソオチョウが各地の丘陵で数多く見られるようになり,すでに定着したかにみえるが,これは人為的にもち込まれた帰化種でありウマノスズクサを食べるところから同じ食草を食べる在来のジャコウアゲハが圧迫されはじめている。植物を食べる昆虫は植物防疫法でかたく輸入が禁じられているにもかかわらず,ひそかに持ち込まれる例があってホソオチョウのように在来種に影響をもたらすことはきわめて遺憾である。チョウの保護については研究者のみならず一般の関心を高め,二度とこのような例を起こさぬよう注意しなければならない。
 →鱗翅類
執筆者:

漢字の蝶という字は,薄くてひらひらした虫を表している。その音はtāp→tepと変化し,日本ではそれを借りてテフ→テオ→チョウと読み,使用してきたし,またしばしばテフテフ,チョウチョウと同音節を二度繰り返して畳語的に使ってもきた。フランス語のパピヨン,イタリア語のファルファラ,ポルトガル語のボルボレータはいずれもラテン語のパピリオに由来し,その祖形はパルパル→パルパリオンであり,これもひらひら,ぱたぱたしたものを表す畳語法である。同じことがインドネシア語のクプクプ,フィリピン,タガログ語のパロパロにも見られる。

 日本語では蝶と蛾を区別するが,欧米では英語で蝶をbutterfly(butter+fly,すなわちバターの色をした飛ぶ虫の意)とよび,蛾をmothとよぶという区別があるだけで,他のことばではたいてい両者を一つのことばで表している。そして区別がどうしても必要なときに,たとえばフランス語のpapillon de nuit,ドイツ語のNachtfalterのように,蛾を〈夜の蝶〉という。

 蝶には花から花へと飛び,みつを吸ってまわる華やかなものというイメージがあり,フランス語ではパピヨンが移り気な,あるいは気まぐれな精神の持主を指すことがある。また蝶(蛾)は知らせをもたらすものでもあり,それが夕方窓から家に飛びこんでくると,待ちに待った知らせがまもなくくるといって喜ぶ。しかし黒い蝶(蛾)は不吉なものと考えられ,春に初めて見た蝶が黒い種であると本人が病気になるか,年内に家族に病人が出るという。
執筆者: 日本の古語はカハヒラコであるらしい(《新撰字鏡》)。《吾妻鏡》には,蝶が群飛するのを怪異として社寺に祈禱する記事が散見する。蝶類の大発生は環境条件によることが多いが,昔の人々にとっては精霊の化生して訪れたもののように感じられたのであろう。人の霊が死後蝶に化したという話もあり,中国で《荘子》に魂が蝶となって夢の中で遊んだ話があるのと類を同じくする。これらは,幼虫からさなぎとなり,さらに変じて羽化して飛びたつという姿をさまざまに変える現象と,人の生死を変身して他界にいくこととの連想があったかと思われる。
執筆者:

チョウ (金魚蝨)
fish lice
Argulus japonicus

キンギョ,フナ,コイなどの淡水魚の体表に一時的に着生して,血液を吸い大害を与える小型の鰓尾亜綱チョウ科の甲殻類。体長5mmくらい。体は扁平な円盤状をしており透明。魚の体表を離れて泳ぐときは,木の葉が落ちるときのように左右に揺れながら泳ぐ。元来,日本の固有種であるが,ヨーロッパやアメリカなどに移入され分布している。チョウに外部寄生されると,血液を吸われて魚が弱って死んだりするので,見つけしだいピンセットなどで取り除いてやるのがよい。

 近縁のものに,アユ,マス,タナゴの体表から1cm前後のチョウモドキA.coregoniや,フグ,マンボウなどの体表にふつうに寄生している3cmくらいの大型のウミチョウA.scutiformisなどが知られている。
執筆者:


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チョウ」の意味・わかりやすい解説

チョウ
Chhau

東インドの仮面舞踊劇。ウェストベンガル州のプルーリアとミドナプル,ビハール州セライケラ,オリッサ州のバリパーダで演じられる。これらの地域はそれぞれ 100kmと離れてはいないが舞踊形態はかなり異なり,特に農民の演じるプルーリアのチョウと,王族の演じるセライケラのチョウは,あらゆる面で対照的である。 (1) プルーリアのチョウ 雨期の1ヵ月前頃から演じられるところから雨ごい儀式と関係するといわれる。演者はドール (太鼓) の激しい音に合せて大地をたたくしぐさで登場し,天地に民衆の願いを訴える。両足を大きく開き,両手を左右に構えるその姿は歌舞伎の見得を切る姿に似ている。動きには跳躍,回転などの足態が多い。舞台はなく,ガスランプの暗いなかで,激しくすさまじい戦闘場面が展開される。仮面は紙製で,頭飾りにクジャクの羽根や,はなやかな金具をつける。これらはすべてチョリダ村でしか作られていない。各村々によって演出は異なるが,おもな物語は『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』からのものが多い。 (2) セライケラのチョウ 4月に行われる春の再来,豊穣を祝うアルダナーリーシュバラの祭りで演じられる。本来は戦闘訓練であるパリ・カンダ (「パリ」は楯,「カンダ」は剣) の様式が発達したものとされる。現在,上演演目は 60以上といわれ,春,雨,夜,太陽など自然界を表現したもの,ナクチョウ,クジャク,チョウ (蝶) などの動物を表現したもの,漁師,猟師,船頭などを表現したものがある。特にクジャクを舞う「モユール」はセライケラのチョウの精髄とさえいわれ,セライケラ宮廷の王侯貴族によってのみ伝承されてきた。

チョウ
Argulus japonicus; carp-louse

顎脚綱鰓尾目チョウ科 Argulidae。コイ,キンギョなどの淡水魚の体表につく寄生虫。体長 5mm。体は長円形で扁平で,鱗のように見える。腹面にある吸盤とかぎ(鉤)で魚の体表に密着し,吻を刺して宿主の組織液や血液を吸うが,宿主から離れて 4対の付属肢で自由に泳ぐこともできる。卵は水草などに産みつけ,約 4週間で孵化する。チョウ科は世界で約 150種が知られており,多くは淡水産であるが海産種も知られ,フグ類マンボウの体表につくウミチョウ Dolops formis はチョウ科の最大種で,体長 3cmに達する。日本からはチョウによく似たチョウモドキ A. coregoni も知られている。(→顎脚類甲殻類鰓尾類節足動物

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世界大百科事典(旧版)内のチョウの言及

【鰓尾類】より

…鰓尾亜綱鰓尾亜目Branchiuraの小型甲殻類の総称。チョウ科のみを含み,4属約150種が知られ,淡水魚に寄生するチョウ,海産魚のウミチョウなどがある。魚類,カエルなどの体表に一時寄生し,血液を吸う。…

【水泳】より

…女子100mはP.ヘインズ(南アフリカ)がアトランタ大会で出した1分07秒02,200mはR.ブラウン(オーストラリア)のもつ2分24秒76である。
[バタフライbutterfly]
 チョウが飛ぶような動きの泳法。平泳の変化したもので,空中高く前方に運んだ両腕を一気に下ろして水をかき切る。…

【虫】より

…虫の字は虺の古文として用いられて〈キ〉と読み,元来はヘビ類の総称であるという。昆虫は蟲と書くのが正しく,蟲豸(ちゆうち)は肢のあるむしで,肢のないものが豸(ち)である。中国ではトラを大蟲といったように,〈虫〉は今の動物分類学上の昆虫のみではなく,虫偏のつく漢字の示すように動物の総称に用いられた。 日本ではもっぱら地表をはう種類に対してこの文字を用い,〈むし〉または〈はうむし〉と称した。大祓の詞に〈昆虫の災〉というのは作物の害虫や人体寄生虫に悩まされることが多かったからで,蛇もまた虫の一種であった。…

※「チョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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