ツクバネソウ(英語表記)Paris tetraphylla A.Gray

改訂新版 世界大百科事典 「ツクバネソウ」の意味・わかりやすい解説

ツクバネソウ
Paris tetraphylla A.Gray

温帯林の林床に普通にみられるユリ科多年草。日本全土に広く分布する。東北地方や日本海側では植物体が大きく葉幅が広いが,西南日本では植物体が小さく葉幅が細いものが多い。四国には花が垂下するウナズキツクバネ花梗が短いヨコグラツクバネが分化していて,変種として区別されることがある。地下茎は細く横にはう。地上茎は高さ10~40cmで,上端に4枚の葉が輪生する。花は地上茎の先端に1個つき,外花被片は緑色で4枚あり,内花被片は退化している。近縁クルマバツクバネソウP.verticillataM.v.Bieb.には,線形の内花被片が4枚ある。この種は通常7~8枚の葉が輪生し,和名はこの性質にちなんだものである。やはり日本全土に分布するが,西南日本では珍しい。両種とも花期は7~8月で,漿果(しようか)は9~10月に黒く熟す。

 ツクバネソウ属はヨーロッパと東アジアに約10種がある。中国からヒマラヤにかけて分布するP.polyphylla Sm.のグループは太い根茎をもち,最近では別属とする見解もある。

 ツクバネソウ,クルマバツクバネソウともに若葉食用となる。後者は根茎を干して漢方薬に用いられ,王孫(おうそん)と呼ばれる。ヨーロッパ産のP.quadrifoliaも薬用にされ,痛み止めに用いられる。また漿果は目の炎症効果があるといわれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツクバネソウ」の意味・わかりやすい解説

ツクバネソウ
つくばねそう / 衝羽根草
[学] Paris tetraphylla A.Gray

ユリ科(APG分類:シュロソウ科)の多年草。地下茎は細長く地中を横走し、径3~5ミリメートル。地上茎は高さ10~40センチメートルで無毛。普通は4枚の葉を輪生するが、葉は典型的な地理的クラインを示し、北海道から本州北陸地方にかけて生育するものは幅が広く、広卵形から卵形。本州中部地方から南西部、四国、九州にかけてのものはしだいに葉幅が狭く、披針(ひしん)形である。花柄も個体差が大きく、0.3~15センチメートル。5~7月、茎頂に1花をつけ、外花被片(かひへん)は4枚で緑色、内花被片はない。果実は球形、径1~1.2センチメートルの液果で、秋に黒く熟す。北海道から九州の低山帯の落葉樹林から亜高山帯下部の針葉樹林内に生える。

[河野昭一 2018年11月19日]

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百科事典マイペディア 「ツクバネソウ」の意味・わかりやすい解説

ツクバネソウ

北海道〜九州の山地の林中にはえるユリ科の多年草。茎は横走する根茎の先から出て高さ20〜40cm。茎頂に4〜5枚の葉を輪生する。5〜6月,茎頂から出た花柄の先に径2cm内外の黄緑花を1個つける。がく片4枚,花弁はない。おしべ8本。近縁のクルマバツクバネソウは葉が約8枚茎頂に輪生し,花には,糸状で目立たない4枚の花弁がある。全体にやや大きい。

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