ツリガネニンジン(読み)つりがねにんじん

改訂新版 世界大百科事典 「ツリガネニンジン」の意味・わかりやすい解説

ツリガネニンジン (釣鐘人参)
Adenophora triphylla(Thunb.) A.DC.ssp.aperticampanulata Kitam.

キキョウ科の多年草。日当りのよい草地に生える。夏から秋にかけて青紫色の釣鐘形の花が数個ずつ数段にわたって下向きに咲く。太い根や根茎は薬用植物のチョウセンニンジンにたとえられた。地方によってはトトキとよばれ,若芽や根は食用とされる。〈山でうまいはオクラにトトキ,里でうまいはウリ,ナスビ〉という俚謡がある。茎は高さ40~50cm,ふつう直立するが,北海道には茎がはうハイツリガネニンジンがある。葉は3~4枚ずつ輪生し,長さ4~8cm程度,広狭いろいろある。葉柄はない。萼裂片は線状,花冠は長さ1.5~2cm,花柱は花冠から突き出し,基部に円筒形の花盤がある。薬用として去痰薬に利用されるが,キキョウほどではない。

 ツリガネニンジン属Adenophoraは花柱の基部をとり巻く花盤があることが最大の特徴で,ユーラシア大陸に50種ほど分布している。日本には10種ほど自生している。イワシャジンA.takedae Makinoは東海地方に分布し,岩壁に生える。ソバナA.remotifolia Miq.は長い葉柄があり,本州~九州および朝鮮に分布し,ふつう谷筋に生える。染色体数は17の倍数原則で,ツリガネニンジンやイワシャジンは2n=34であるが,ソバナは例外で2n=36である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツリガネニンジン」の意味・わかりやすい解説

ツリガネニンジン
つりがねにんじん / 釣鐘人参
[学] Adenophora triphylla (Thunb.) A.DC. var. japonica (Regel) Hara

キキョウ科(APG分類:キキョウ科)の多年草。ツリガネソウともいう。茎は高さ0.4~1メートル、折ると白い液が出る。葉は長楕円(ちょうだえん)形から卵状長楕円形で、4~5枚が輪生する。8~10月、茎の先に多数の淡紫色花を下向きに輪生する。花冠は鐘形、花柱は抽出する。丘陵帯から山地帯の草原、畦(あぜ)などに生え、日本全土、および樺太(からふと)(サハリン)、南千島に分布する。名は、花が釣鐘形で、根が太くチョウセンニンジンに似ていることによる。また、花の形から地方によってフウリンソウ(風鈴草)、チョウチンバナ(提灯花)などの名もある。俗に若苗をトトキと称し食用にし、根を乾燥したものは漢方で沙参(しゃじん)とよび、強壮去痰(きょたん)剤に用いる。学名上の母種にあたるサイヨウシャジンは本州中部以西、四国、九州、および朝鮮半島、台湾、中国に、ハクサンシャジンは丈が低く、花序の枝が短くなった変種で中部地方以北の本州、北海道の亜高山に分布する。

 ツリガネニンジン属は花柱の基部が筒状または杯(さかずき)状の花盤に包まれる。世界に約70種、日本に約15種分布する。

[高橋秀男 2021年10月20日]


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百科事典マイペディア 「ツリガネニンジン」の意味・わかりやすい解説

ツリガネニンジン

ツリガネソウとも。キキョウ科の多年草。日本全土,東アジアに分布し,日当りのよい山野の草地にはえる。茎は直立し,高さ1m内外,切れば白汁が出る。葉は3〜6枚ずつ輪生し,縁には細鋸歯(きょし)がある。8〜10月淡紫色の花を円錐花序につける。花冠は鐘形で長さ1.5〜2cm。根は白色で肥大し,薬用とされ,また若芽はトトキとよばれて代表的な山菜の一つ。本州中部〜北部の高山にはえるヒメシャジンは高さ50cm内外,花は総状について,大きく長さ約2cm,萼片に細鋸歯があり,葉は互生する。ミヤマシャジンはヒメシャジンに似ているが,萼片に鋸歯がない。

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