テンニンカ(英語表記)Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.

改訂新版 世界大百科事典 「テンニンカ」の意味・わかりやすい解説

テンニンカ
Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.

枝先に淡紅色の美しい花をつけるフトモモ科の常緑低木。観賞用として栽培されるが,沖縄や台湾には自生する。茎は直立し分枝する。葉は対生し,長楕円形で葉縁に鋸歯がなく,厚みがあり,縦に走る3本の葉脈が目だつ。葉,花梗,若い枝には白い綿毛が生じ,葉裏の綿毛は成熟しても残る。花は径2cmくらいで,萼片5枚,花弁5枚からなり,花弁は丸みを帯びている。おしべは多数あり,花糸は淡紅色。子房下位,花柱は1本。開花期は夏,熱帯では周年。果実は径1~5cmくらいで暗紫色に熟し,果肉は多汁質で甘くて香りがある。生食するほか,ジュースやジャムの原料にも使われる。また果実,葉,根は民間薬として使われ,昔は材のタールで歯を黒く染める御歯黒や眉墨を作った。繁殖は実生または挿木による。東南アジアの熱帯から亜熱帯域に広く分布する。日本本土では戸外越冬は困難であるが,沖縄でははげ山のようなところに野生する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「テンニンカ」の意味・わかりやすい解説

テンニンカ
てんにんか
[学] Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.

フトモモ科(APG分類:フトモモ科)の常緑低木。若い茎、葉は白色の綿毛を密生する。葉は対生し、長楕円(ちょうだえん)形で質はやや厚い。6月ころ、茎上部の各葉腋(ようえき)に淡紅紫色で径約2センチメートルの美しい5弁花を2、3個開く。果実は液果で径1~2センチメートル、暗紫色に熟す。沖縄、および中国大陸南部、台湾、フィリピン、マレーシア、インドに広く分布する。果実は甘く芳香があり、ジャムをつくる。原産地では庭木とするほか、薪炭、杭(くい)などの用材とする。繁殖は実生(みしょう)または挿木により、5℃以上で越冬する。テンニンカ属はニューギニア、オーストラリアなどにも分布し、約20種知られているが、日本ではあまり栽培されない。

[高林成年 2020年8月20日]

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