精選版 日本国語大辞典 「デステイル」の意味・読み・例文・類語
デ‐ステイル
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20世紀初めオランダに興った抽象美術運動。ファン・ドゥースブルフはモンドリアンの絵画と造形思想に共鳴し,彼とともに〈新造形主義Neoplasticisme〉を成立させ,この思想を広めるために雑誌の発行(1917-28)を中心とした新しい造形運動をライデンで起こした。〈デ・ステイル〉(オランダ語で〈様式〉)はこの雑誌の題で,やがて運動の名称ともなった。最初のメンバーはファン・ドゥースブルフ,モンドリアンのほか,建築家アウト,詩人コックAntonie Kokらで,やがて彫刻家ファントンヘルローGeorges Vantongerloo(1886-1965)や建築家・家具デザイナーのリートフェルトらが加わり,さらに1919年以降運動がドイツ,フランス,イタリア,ベルギーに広がるにつれて,リヒター,シュウィッタース,アルプ,ブランクーシらが参加した。彼らは,現代の普遍的な精神を表す造形芸術はその表現手段においてもいわば普遍的な造形言語を持つべきだと主張して,絵画から彫刻や建築の領域へと活動を広げ,バウハウスをはじめ同時代のヨーロッパ美術・建築に大きな影響を与えた。リートフェルトのシュレーダー邸(1924,ユトレヒト)やファン・ドゥースブルフのレストラン〈オーベット〉の装飾(1926,ストラスブール)はその代表作である。領域の拡大や活動の国際化によって厳しい造形手段も少し緩和し,垂直,水平の秩序に斜線を取り入れた〈要素主義Elementarisme〉へと転換した。モンドリアンはこれに賛成できず,25年にグループを脱退した。30年ファン・ドゥースブルフはパリで〈抽象・創造(アプストラクシオン・クレアシオン)〉グループを組織し,デ・ステイルをひきつぎ抽象美術運動の再出発をはかるが,翌年死去し,この運動は中絶した。
執筆者:宮島 久雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 建築では,17世紀にファン・カンペンがアムステルダム市庁舎,ハーグのマウリッツハイスを残し,19世紀後半のカイペルスはネオ・ゴシック様式のアムステルダム国立美術館,アムステルダム中央駅を建て,20世紀になってベルラーヘはアムステルダムの株式取引所の設計で合理的な近代性を追求した。戦間期の〈デ・ステイル〉グループは画家のモンドリアン,ファン・ドゥースブルフも加え,アウト,リートフェルトらが幾何学的形態と明確な空間の創造を唱え,国際的反響を呼んだ。第2次大戦後のモニュメンタルな作品にはロッテルダムのラインバーン,ユーロマスト,スキポール空港ビルなどがある。…
…明快な合理性に支配されたこの建築はゼイルLambertus Zijl(1866‐1947)の彫刻によっても名高い。20世紀美術は本質的に国境のない美術であり,オランダにおいても各国の影響の下にさまざまな傾向の流派が成立したが,なかではオランダ的美意識と普遍性の稀有の結合とも評すべき純粋幾何学的抽象絵画を創始したモンドリアン,およびその同僚ファン・ドゥースブルフら〈デ・ステイル〉グループの意義が際だって大きい。同グループのリートフェルトやアウトはベルラーヘの路線を継いで機能主義建築を発展させた。…
…こうして,白い箱のような近代建築のイメージができ上がる。幾何的抽象の美学を建築にもたらそうとする考えはG.T.リートフェルト,J.J.P.アウトら,〈デ・ステイル〉グループの建築家によっても,またサンテリアなどのイタリア未来派の建築家たちによっても提唱された。しかしその一方で,抽象的ではあるが彫塑的な性格の強い造形を行うE.メンデルゾーンらのドイツ表現主義の建築家たちもいた。…
…すなわち,まず,当時ミュンヘンにいたカンディンスキーの1910年ころからの試み,キュビスムにおける描写対象の分解・分析・総合,キュビスムから枝分かれしたR.ドローネー,ピカビア,クプカF.KupkaらによるオルフィスムOrphismeの音楽的詩的抽象,マレービチの純粋幾何学的抽象の試みであるシュプレマティズムといった動きが抽象芸術を形づくる。次いで,オランダで新造形主義をかかげたモンドリアン,彼を支持したファン・ドゥースブルフらの絵画,彫刻,デザイン,建築等の各分野にわたる運動であるデ・ステイル(1917年より同名の雑誌を刊行),革命後,やはり各分野にわたる広がりをみせたロシアの構成主義(タトリン,リシツキー,ガボ,ペブスナー,ロドチェンコら)などによって抽象芸術は急速に広まり,両大戦間にはシュルレアリスムと並ぶ一大動向を形成し,1930年代には早くもマンネリ化,アカデミズム化の現象すらみせている。そして第2次大戦後,アメリカのポロック,ヨーロッパのフォートリエ,ボルスらを先駆とする抽象表現主義的動向が,1950年代にはほぼ世界中を席巻する。…
※「デステイル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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