デーブリーン(読み)でーぶりーん(英語表記)Alfred Döblin

精選版 日本国語大辞典 「デーブリーン」の意味・読み・例文・類語

デーブリーン

(Alfred Döblin アルフレート━) ドイツ小説家ポーランド生まれのユダヤ人。革命的な表現主義文芸雑誌「嵐」の編集に参画ナチス迫害をのがれて、フランスアメリカなどに亡命代表作ベルリン‐アレクサンダー広場」。(一八七八‐一九五七

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デジタル大辞泉 「デーブリーン」の意味・読み・例文・類語

デーブリーン(Alfred Bruno Döblin)

[1878~1957]ドイツのユダヤ系小説家・精神科医ナチス時代、初めフランス、のち米国へ亡命。宗教的色彩の濃い作品を発表した。作「ベルリン‐アレクサンダー広場」「運命の旅」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デーブリーン」の意味・わかりやすい解説

デーブリーン
でーぶりーん
Alfred Döblin
(1878―1957)

ドイツの作家。ユダヤ人の仕立屋の子として、現在のポーランド領シュチェチンに生まれる。10歳のとき、父が愛人とアメリカに逃亡したので家族とともにベルリンに出、精神医学を学んでベルリン東部の貧民街で開業した。早くから表現派の詩人たちと交わり、短編小説『たんぽぽ殺し』(1913)は表現主義の先駆的作品となる。その後18世紀の中国の革命運動を扱った長編『バン・ルーンの三つの跳躍』(1915)、三十年戦争を素材とした『ワレンシュタイン』(1920)などを書き社会主義的信条を表明社会民主党の立場で政治運動にも加わった。ファシズム前夜のベルリンの下層社会を舞台に、更生を誓って出獄した元トラック運転手の零落の運命を扱った大都市小説『ベルリン・アレクサンダー広場』(1929)は、現代ドイツ文学の最高傑作の一つといわれ、ベストセラーとなり、また映画化もされた。1933年にパリに亡命しフランスの共産主義者らと交流、共産革命とキリスト教の問題をテーマとした『1918年11月』(1940)を書いたあとカトリックに改宗した。第二次世界大戦後は旧西ドイツで文学雑誌『金の門』を出版し文化の復興に献身、また一家族の崩壊を描いた深層心理学的小説『ハムレット――あるいはながき夜は終わりて』(1956)を書いたが認められず、不運のうちに病死した。

[早崎守俊]

『早崎守俊訳『ベルリン・アレクサンダー広場』全2巻(1971・河出書房新社)』『早崎守俊訳『ハムレット――あるいはながき夜は終わりて』全2巻(1970・筑摩書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「デーブリーン」の意味・わかりやすい解説

デーブリーン
Alfred Döblin
生没年:1878-1957

ユダヤ系ドイツ作家。精神科医としてベルリンで開業。1910年に革命的文芸誌《あらし》の創刊に参加,表現主義的な短編小説を発表して新しい文学の旗手となった。中国を舞台とした《ワン・ルンの三つの跳躍》(1915)や歴史小説《ワレンシュタイン》(1920)などのあと,ワイマール文化爛熟期のベルリン下町に生きる犯罪者の運命を描いた社会主義的な都市小説《ベルリン・アレクサンダー広場》(1929)で世界的な名声を得た。ジョイスの《ユリシーズ》のモンタージュや内的告白の技法を大胆にとりいれ,表現主義からダダ,シュルレアリスム,新即物主義にいたるあらゆる言語的冒険を試みたこの作品は,長くベストセラーをつづけ,31年には映画化された。33年ナチスの迫害をのがれフランスに亡命,戦後は一家族の崩壊を描いた深層心理学的小説《ハムレット》を書いたが認められず,南ドイツのサナトリウムで不運と貧困のうちに病死した。
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百科事典マイペディア 「デーブリーン」の意味・わかりやすい解説

デーブリーン

ドイツのユダヤ系作家。初めベルリンで神経科医。表現主義的文芸誌《あらし》の創刊に参加。ジョイスの《ユリシーズ》の影響を受け,モンタージュや内的独白などの手法を用い,都会の悪に翻弄(ほんろう)される精神異常の男を描く傑作《ベルリン・アレクサンダー広場》(1929年)のほか,《バビロン放浪》《1918年11月》《ハムレット》などの作品で知られる。第2次大戦中はフランス,米国に亡命。
→関連項目新即物主義

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