トウチー(読み)とうちー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トウチー」の意味・わかりやすい解説

トウチー
とうちー / 豆豉

蔭豉(インチー)ともいい、中国では一般家庭でよく利用されている調味用食品。『斉民(せいみん)要術』(6世紀ころ)に豉(くき)作り(豆豉(とうし))のことが詳しく記載されている。それによると、初めに暖かい蔭屋(うつむろ)(密閉室)の中で発酵させるとあり、現在蔭豉ともよばれている理由がよくわかる。日本へは奈良時代に鑑真(がんじん)によって豉が伝えられたといわれる。

 クロマメあるいはダイズを6~8時間水に浸し、洗浄後蒸籠(せいろう)に入れて3~4時間蒸し、冷ましたのち密閉室の中の棚に移す。室温30℃くらいを保ち3~4日間たつと豆の表面に灰色麹(こうじ)の菌糸が出てくるので、軽く切り返す。その後7~10日を経ると黄緑色のカビが豆の全体を覆う。カビを水できれいに洗い、食塩、酒、砂糖と混ぜて稲藁(いねわら)を敷いてある籠(かご)に入れ、重石(おもし)をのせておく。10~15日後、豆の粒を取り出して乾燥させると製品になる。なお、烏豆醤油(ウートウチャンユー)の製造過程中で、食塩水を豆麹の中に加え4~5週間たったあと、豆をすくい上げて、そのまま乾燥させると、豆豉(トウチー)と同じ製品になる。

 豚肉あるいはカキの炒(いた)め料理には、まず鍋(なべ)を加熱して油をひいたのち、輪切りにした長ネギとたたきつぶしたニンニクを入れ、手早くかき回してから豚肉あるいはカキと豆豉を混ぜて炒め、最後に少し水を加える。塩を入れなくても塩味の料理ができあがる。またそのまま食べても美味で、とくに塩味があるので粥(かゆ)の副食によい。

[鄭 耀 星]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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