トックリヤシ(読み)とっくりやし(英語表記)bottle palm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トックリヤシ」の意味・わかりやすい解説

トックリヤシ
とっくりやし
bottle palm
[学] Hyophorbe lagenicaulis (Bailey) Moore
Mascarena lageniraulis Bailey

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)トックリヤシ属の一種。種名はとっくり状をした幹茎の意味。原産地は属名にもなっているマスカリーン諸島インド洋の南西部)。幹は高さ15~18メートル、径40~60センチメートル。とっくり状の幹茎を観賞するのは幼樹の期間で、とっくり状は1.5メートルの高さまでで、成樹して開花すると径25センチメートルほどの円柱となり、波状に傾斜して伸長する例が多い。幹肌は平滑で、浅い葉痕(ようこん)の環紋がある。葉は光沢のある緑色の羽状葉で5~6枚あり、長さ1.3~1.8メートル、幅0.6~0.9メートル。小葉は中軸に対し40~60枚がV字状に対生し、羽片は両縁が上方に湾曲した全裂披針(ひしん)形で、裂片は長さ30~40センチメートル、幅3~5センチメートル、鱗片(りんぺん)とやや重なる。葉柄は長さ30センチメートル、太くて丸い軸で淡黄色。雌雄同株で単性花をつける。肉穂花序は長さ6~7.5センチメートル、花は黄白色で長さ4ミリメートル。雄花花弁杓子(しゃくし)状、雄しべは6本で短く、葯(やく)は麦粒状、不稔(ふねん)の雌しべがある。雌花円錐(えんすい)状で柱頭は3裂する。果実楕円(だえん)形で長さ2.5センチメートル、幅1.5~1.8センチメートル、橙(だいだい)色または暗黄色種子はほぼ円形で、径1.8~2センチメートル、胚(はい)は中央側部にある。

 近縁種トックリヤシモドキH. verschaffeltii H.Wendl.(M. verschaffeltii Bailey)もマスカリーン諸島原産。幹は単一で直立し、高さ6~10メートル、径20~30センチメートル。高さ1メートルくらいから上部で径約30センチメートルになると成樹し、結実する。小葉は滑らかで、重なることはなく、羽片の間隔が1~2センチメートルある。肉穂花序は前種同様であるが、花は橙色で、雄花は4~5ミリメートル、4個以下の花束(かそく)が線列をなして花軸に並行して配列するのが、前種と異なる。

 ともに観賞用によく栽培され、栽培温度は最低5℃を要する。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「トックリヤシ」の意味・わかりやすい解説

トックリヤシ
bottle palm
Hyophorbe lagenicaulis (Bailey) H.E.Moore

ヤシ科トックリヤシ属Hyophorbeの1種で,モーリシャスの原産。マスカレナ属Mascarenaに分類されることもある。高さ15m以上の高木だが,幹の下部がとっくり状に膨らむ。観賞価値が高いのは,高さ2~3mの幼苗期で,生長するにつれて幹の形はくずれる。葉は長さ150cmほどの羽状複葉で,40~60対の小葉をつける。葉柄と葉鞘(ようしよう)部は淡黄白緑色で,葉鞘は円筒状になり,幹の上部を包む。若い実生苗の葉柄と葉鞘は赤褐色を帯びる。トックリヤシモドキH.verschaffeltii Wendl.もモーリシャス原産の同じ仲間で,葉形がトックリヤシに似ているところから和名がついた。幹はとっくり状にならないが,羽状複葉は斜上し,長さ2m以上にもなり,葉数は少ないが雄大である。両種とも1912年前後に渡来した。単幹性なので実生繁殖するしかない。強健で5~8℃の低温にも耐え,幼苗期を観葉鉢物として利用する。
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