トリトニア(英語表記)Tritonia

改訂新版 世界大百科事典 「トリトニア」の意味・わかりやすい解説

トリトニア
Tritonia

アヤメ科の秋植えの半耐寒性小球根植物。ヒメトウショウブ属Tritonia南アフリカを中心に約50種ほどの原種が分化し,その大半が直立性のフリージアのような植物で,切花用,鉢用として利用される。日本では,まだ少数種しか導入されていない。アカバナヒメアヤメT.crocata(L.)Ker.-Gawl.はフリージアによく似た草形で,高さ約45cmの花茎に,5~6月,7~9花を総状につける。花は下部筒状上部半分は6弁となって展開し,上向きに咲く。赤,橙,黄,白色などの多くの園芸品種がある。トリトニア・ヒヤリナT.hyalina (L.F.) Bakerは前種に似ているが,サーモンピンクの花は筒部がすけて見える。栽培はフリージアに準ずる。イキシアに似た球根は,9月下旬ごろに植えつける。品種改良大輪の花を咲かすものが作出されているし,花色も変化に富むので,新品種の導入によって今後もっと栽培が普及するであろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリトニア」の意味・わかりやすい解説

トリトニア
とりとにあ
[学] Tritonia

アヤメ科(APG分類:アヤメ科)の秋植え球根草。秋のうちに剣状の葉を数枚つける。5~6月、30~50センチメートルの花茎を出し、フリージアに似た花を8、9個穂状につける。芳香はないが、切り花や鉢植えに向く。南アフリカ原産。クロカタ種T. crocata Ker-Gawlはアカバナヒメアヤメともいい、約45センチメートルの花茎に7~9個の花を開く。品種に濃橙(のうとう)色のインコンパラビル、白色のホワイト・ビューティ、桃色のローザリンなどがある。ヒアリナ種T. hyalina Bakerはクロカタに似た花姿で、淡橙色花を開く。繁殖は分球により、10月ころ植え付ける。暖地では露地で越冬するが、中部地方以北では鉢植えにし、フレーム内か室内の窓辺で栽培する。夏に葉が枯れたら球根を掘り上げ、乾燥して貯蔵する。

[平城好明 2019年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリトニア」の意味・わかりやすい解説

トリトニア
Tritonia; Tritonia blazing star

アヤメ科の多年草。南アフリカに 40~50種知られているが,花壇や切り花用に栽培されるものもある。葉は線形または剣状で基部は鞘となる。花は円錐状穂状花序につき,6個の花被片は下部は筒状に,上部は鐘状に広がり,淡紅色,黄色,黄褐色,赤色,白色などがある。外形はフリージアに似ている。観賞用に栽培されるものには,ヒメヒオウギズイセン T. crocosmaefloraスイセンアヤメ T. lineata,ヒメトウショウブ T. pottsiiなどがある。

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百科事典マイペディア 「トリトニア」の意味・わかりやすい解説

トリトニア

主として南アフリカ原産のアヤメ科の一属で,約50種がある。春咲き球根植物。一般に多く栽培されるのはトリトニア・クロカタとその園芸品種である。長さ20cm,幅2cmほどの剣状の葉を4〜6枚多少扇形に開く。4〜6月,花柄を葉の2〜3倍の長さに伸ばし5〜10花を片側につける。花被片は6枚で原種は鮮黄だいだい色。園芸品種は赤や紫もある。ふつうはフレームの中で越冬させて栽培する。

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