トールキン(英語表記)Tolkien, John Ronald Reuel

デジタル大辞泉 「トールキン」の意味・読み・例文・類語

トールキン(John Ronald Reuel Tolkien)

[1892~1973]英国の児童文学作家・英語学者南アフリカに生まれ、英国に移住オックスフォード大学教授。中世の伝説や言語への深い知識をもとに、「指輪物語」などのファンタジー文学作品を残した。他に「ホビットの冒険」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トールキン」の意味・わかりやすい解説

トールキン
Tolkien, John Ronald Reuel

[生]1892.1.3. 南アフリカ,ブルームフォンテーン
[没]1973.9.2ハンプシャー,ボーンマス
南アフリカ生れのイギリスの言語学者,古代中世文学者,作家。 1896年イギリスに移住。オックスフォード大学で英語英文学を学ぶ。 1919年修士号取得。『オックスフォード英語辞典』の編集助手を経て,20~25年リーズ大学で教鞭をとる。 25~59年オックスフォード大学教授。専門は古期・中期英語で,著作に『ベーオウルフ研究』 Beowulf:The Monsters and the Critics (36) がある。 37年研究のかたわら,4人のわが子に語り聞かせた話をもとに書いた『ホビット』 The Hobbitを出版,大好評を博す。小人族のホビットが活躍するこの宝探しの冒険物語はその後,ホビットが持ち帰った指輪をめぐる善と悪との対決を描く壮大なファンタジー3部作『指輪物語』 The Lord of the Rings-『旅の仲間』 The Fellowship of the Ring (54) ,『二つの塔』 The Two Towers (55) ,『王の帰還』 The Return of the King (56) に発展,世界各国で出版され爆発的な人気を呼ぶ。これらの作品は神話や伝説など伝承文学をもとにした叙事詩ファンタジーという新ジャンルを確立し,第2次世界大戦後のイギリス児童文学に大きな影響を与えた。ほかに『農夫ジャイルズの冒険』 Farmer Giles of Ham (1949) ,『トム・ボンバディルの冒険』 The Adventures of Tom Bombadil (62) ,『星をのんだかじや』 Smith of Wootton Major (67) ,小論『妖精物語について』 On Fairy-Stories (64) ,指輪物語の前編となるはずだったが,自身の死で未完に終わった『シルマリルの物語』 The Silmarillion (77) ,また没後出版された作品に『サンタ・クロースからの手紙』 The Father Christmas Letters (76) ,Unfinished Tales of Númenor and Middle-earth (80) ,Roverandom (98) などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トールキン」の意味・わかりやすい解説

トールキン
とーるきん
John Ronald Reuel Tolkien
(1892―1973)

イギリスの英語学者、中世文学者、作家。1月3日、南アフリカに生まれる。3歳のときイギリスに移住、バーミンガムで育つ。オックスフォード大学を出て『オックスフォード英語辞典』の編集助手をつとめたあと、1920年からリーズ大学で教え、同大教授(1924~1925)、のちにオックスフォード大学教授(1925~1959)。学者としての業績には『ベオウルフ――怪物と批評家たち』(1937)のほか『サー・ガーウェインと緑の騎士』その他の編著などがあるが、一般には『指輪物語』三部作(1954~1956)を中心とする物語作者として知られる。この大著の前後に『ホビット』(1937/邦訳名『ホビットの冒険』)、没後刊行された『シルマリリオン』(1977/邦訳名『シルマリルの物語』)などの物語やいくつかの詩があって、全体として、人間より小柄のホビット族や妖精(エルフ)、小人(ドゥオーフ)、さらには魔法使いや竜なども活躍する壮大なファンタジーの世界が築かれる。中世の伝説や言語への深い知識に支えられたこれらの作品には熱狂的な読者も多い。9月2日没。

[村上淑郎 2018年7月20日]

『吉田新一訳『トールキン小品集』(1975/改題『農夫ジャイルズの冒険』・2002・評論社/評論社・てのり文庫)』『瀬田貞二訳『ホビットの冒険』上下(1999・岩波書店)』『瀬田貞二訳『指輪物語』全10冊(評論社文庫)』『ハンフリー・カーペンター著、菅原啓州訳『J・R・R・トールキン 或る伝記』新装版(1996・評論社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「トールキン」の意味・わかりやすい解説

トールキン
John Ronald Reuel Tolkien
生没年:1892-1973

イギリスの中世学者,ファンタジー作家。南アフリカ生れ。オックスフォード大学を卒業後,《オックスフォード英語辞典》の編集に参画。同大学の古英語教授(1925-45),同大学マートン英語英文学教授(1945-59)などを歴任。大学では同僚のC.S.ルイスらと親交を結んだ。彼の最初の小説《ホビットの冒険》(1937)もホビット族の小人3人を主人公にしたものであるが,彼の最大傑作は60歳を過ぎて発表した,妖精や小人の活躍する三部作《指輪物語》(1954-55)である。中世文学の伝統を今に生かしたこの大長編は,ルネサンス以来はじめての本格的ロマンスといわれ,その豊かな幻想性,社会へのペシミズムと個人に対する希望的態度という基調のせいで,60年代以降の英米の若者たちの間で非常な人気を博した。この後,この三部作の時代よりもさらに前の時代を扱った,魔法の力をもった真珠をめぐる長編物語《シルマリリオン》を執筆していたが,未完のまま病没した。なお,この作品は息子の手で完成(1977刊)された。
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百科事典マイペディア 「トールキン」の意味・わかりやすい解説

トールキン

英国のファンタジー作家。また,古代・中世英語,英文学の学者でもあり,オックスフォード大学などで教鞭をとった。代表作である長編ファンタジー《指輪物語》3巻(1954年―1955年)における,神話的世界の創造,エルフ語の発明などは,ゲルマン・ケルトの言語や伝承文学に対する,作家の関心に支えられている。他に,子供向きに書かれた《ホビットの冒険》(1937年)や,ファンタジー論《妖精物語について》(1938年)などがある。

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世界大百科事典(旧版)内のトールキンの言及

【児童文学】より

…架空世界を取り扱った物語は,J.インジェローの《妖精モプサ》(1869),G.マクドナルドの《北風のうしろの国》(1871),R.キップリングの《ジャングル・ブック》(1894),E.ネズビットの《砂の妖精》(1902),K.グレアムの《たのしい川べ》(1908),J.M.バリーの《ピーター・パンとウェンディ(ピーター・パン)》(1911),W.デ・ラ・メアの《3びきのサル王子たち》(1910)にうけつがれ,ファージョンE.Farjeon《リンゴ畑のマーティン・ピピン》(1921)は空想と現実の美しい織物を織り上げた。さらにA.A.ミルンの《クマのプーさん》(1926)が新領域をひらき,J.R.R.トールキンの《ホビットの冒険》(1937),《指輪物語》(1954‐55)は妖精物語を大成する。C.S.ルイスが架空の国ナルニアの7部の物語(《ナルニア国ものがたり》1950‐56)で善悪の問題を取り扱い,トラバーズP.L.Traversの〈メリー(メアリー)・ポピンズ〉5部作(1934‐82)はユーモアをこめて新しい魔女をつくり出し,ノートンM.Nortonも人間から物を借りてくらす小人たちのミニアチュア世界を5部作(1952‐82)で描いてみせた。…

【ファンタジー】より

…明確な定義としてはこれが最初で,その後の幻想文学全般の活性化によって今日では,(1)幻想文学一般のうち怪奇や恐怖を主題としない作品,(2)SFのうち科学的論理性にこだわらぬ自由な発想によった作品,(3)舞台を現実ではなくまったく架空の神話的世界にもとめ,その中でかつての英雄冒険譚を展開させた作品,がファンタジーと呼ばれる。とりわけ(3)にはトールキンの《指輪物語》を筆頭に,アーサー王伝説やニーベルンゲン物語を現代によみがえらせたような大作が多く,〈ハイ・ファンタジーhigh fantasy〉ないし〈ヒロイック・ファンタジーheroic fantasy〉などと呼ばれて盛んに創作されている。 日常生活に非日常的なものが紛れこむことで新たな混乱や問題が考察されうる効果,すなわち〈異化作用〉は,リアリズムとは趣を異にするファンタジーの主要な役割である。…

※「トールキン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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