ドイツ零年(読み)ドイツレイネン(英語表記)Germania,Anno Zero

デジタル大辞泉 「ドイツ零年」の意味・読み・例文・類語

ドイツれいねん【ドイツ零年】

《〈イタリアGermania Anno Zero》イタリアの映画。1948年作。監督ロッセリーニ。第二次大戦直後の荒廃したベルリン舞台に、ナチスイデオロギーに翻弄される少年が辿る悲劇的末路を描く。「無防備都市」「戦火のかなた」に続き、ネオレアリズモ手法を駆使した、戦争3部作と呼ばれる作品群の最後の作品。

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改訂新版 世界大百科事典 「ドイツ零年」の意味・わかりやすい解説

ドイツ零年 (ドイツれいねん)
Germania,Anno Zero

1947年製作のイタリア映画。《無防備都市》(1945),《戦火かなた》(1946)と戦争三部作をなす〈ネオレアリズモ〉の巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督作品。1946年に9歳で死亡した長男ロマーノにささげられ,冒頭に,イデオロギーというものは人間生活の基礎を形成する道徳とキリスト教の愛の永遠の戒律から逸脱すれば狂気となるにちがいない,という意味のエピグラフ・タイトルがあるとおり,廃墟と化した第2次世界大戦直後のベルリンを舞台に,ナチのイデオロギーの〈背徳的〉影響を受けた15歳の少年が,病弱な父を毒殺したあげく自殺するいきさつを描く。

 だが,敗戦直後のベルリンの社会的現実をとらえ,〈ファシズムの社会的根源〉をさぐろうとしたこの〈抒情的ルポルタージュ〉は失敗に終わり,興行的にも成功せず,以後ロッセリーニは〈ネオレアリズモ〉に背を向けたといわれているが,フランスの〈ヌーベル・バーグ〉への影響は大きく,とくにフランソワ・トリュフォー監督の《大人は判ってくれない》(1959)は,トリュフォー自身も認めるように,《ドイツ零年》のもっとも直接的な血を引く作品である。
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