ドクゼリ(読み)どくぜり(英語表記)water-hemlock

改訂新版 世界大百科事典 「ドクゼリ」の意味・わかりやすい解説

ドクゼリ (毒芹)
water hemlock
cowbane
Cicuta virosa L.

池や沼沢に生えるセリ科の有毒な大型多年草地下茎は太くて緑色中空水中に浮かんでいる。茎は高さ1mに達し,上部で分枝する。葉は2~3回羽状複葉で,毛がない。6~8月ころ,茎の先に複散形花序をつけて,多数の白い花をつける。花弁は5枚で先は内に曲がる。おしべは5本。果実はほぼ球形で,長さ約2.5mm,肋は太くてやや木化し,熟すと落ちて水面に浮いて散布する。地下茎は冬季にたけのこ形をしており,水盤に栽培して延命竹,万年竹などと呼んで観賞することもある。全草,特に根茎シクトキシンcicutoxinや一種のアルデヒドなどを含み,有名な猛毒植物である。誤って食べると神経中枢がおかされ,強直けいれんを起こし,脈拍が増加し,呼吸困難となり一命をおとすこともある。北半球の水湿地に広く分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクゼリ」の意味・わかりやすい解説

ドクゼリ
どくぜり / 毒芹
water-hemlock
cowbane
[学] Cicuta virosa L.

セリ科(APG分類:セリ科)の多年草。地下茎や根にシクトキシンを含む猛毒植物。地下茎は緑色で太く、節があることが特徴である。茎は高さ0.6~1メートルで中空。葉は2~3回羽状複葉、裂片は幅0.5~2センチメートル。6~8月、大形の散形花序をつくり、白色花を開く。果実は緑色で球形、黄色の太い稜(りょう)がある。水辺に生え、北海道から九州、およびアジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。地下茎は延命竹、万年竹の名で売られることもある。ドクゼリ属は北半球の湿地に10種あり、日本には本種のみが分布する。

[門田裕一 2021年11月17日]

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百科事典マイペディア 「ドクゼリ」の意味・わかりやすい解説

ドクゼリ

セリ科の多年草。北海道〜九州,ユーラシアに広く分布し,湿地や小川にはえる。根茎は緑色でたけのこ状。茎は高さ1m内外となり,葉は2回羽状複葉となる。6〜8月,複散形花序を出し,白色の小花を多数開く。セリより大きく,緑色の大きい根茎をもつことなどで区別される。猛毒植物で,全草,とくに根茎にキクトキシンを含み,誤食すると強直けいれんや呼吸困難におちいる。

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世界大百科事典(旧版)内のドクゼリの言及

【有毒植物】より

…シキミに含まれるアニサチン,6月ころに紅紫色の美しい実をつけるドクウツギに含まれるコリアミルチンは,ともに中枢神経を興奮させはげしい痙攣をさそい呼吸困難による死を招く。ドクゼリに含まれるシクトキシンも同様の作用を発揮する。バラ科のアンズ,ウメ,モモなどの種子はアミグダリン,マメ科のライマメ,イネ科植物などはリナマリンなどの青酸配糖体を含有し,腸内細菌の働きで青酸を遊離する結果,チトクロム酸化酵素の活性を阻害し呼吸を止めてしまう。…

※「ドクゼリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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