ドジョウツナギ(英語表記)Glyceria ischyroneura Steud.

改訂新版 世界大百科事典 「ドジョウツナギ」の意味・わかりやすい解説

ドジョウツナギ
Glyceria ischyroneura Steud.

低地の水湿地によく見るイネ科多年草。細い茎はやや叢生(そうせい)し,葉とともに無毛で軟らかく,節で曲がりながら立ち上がり,高さは80cmに達する。葉は細い線形で,長さは40cmくらい,幅は5mmほどで質は薄い。5~6月に開花する。円錐花序は散開し,外形は長卵形で,長さは15~40cm,細い枝を分かち,緑色で小型の小穂多数つける。小穂は長さ5~7mm,3~6個の小花があり,芒(のぎ)はない。日本全土と朝鮮に分布する。和名水田ドジョウをつなぐという意味であろうが,具体的に何を指しているのか不明である。水田の雑草のムツオレグサG.acutiflora Torr.ssp.japonica(Steud.)T.Koyama et Kawanoもこの属に入り,線形の花序に長さ3~5cmもある長い小穂が立ち並ぶので顕著な種類であり,食用にされることがある。

 ドジョウツナギ属Glyceriaは40種ほどが全世界の温帯から亜寒帯を中心に分布し,日本にもほかに高山のミヤマドジョウツナギや北地のウキガヤ,カラフトドジョウツナギなどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドジョウツナギ」の意味・わかりやすい解説

ドジョウツナギ
どじょうつなぎ / 泥鰌繋
[学] Glyceria ischyroneura Steud.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は高さ約1メートル。葉は長さ約40センチメートル、葉舌(ようぜつ)は幅が長さより長く、膜質。5~6月、稈の先端に円錐(えんすい)花序をつくり、まばらに小穂をつける。小穂は狭長楕円(だえん)形で長さ5~7ミリメートル、3~7個の小花がある。包穎(ほうえい)は短く、護穎は卵形で長さ約2.2ミリメートル、7~9本の脈があり、縁(へり)は透明な膜質。花被片(かひへん)にあたる鱗被(りんぴ)は1枚、多肉質で長方形をなす。小軸は内穎の竜骨に沿ってジグザグ状に湾曲し、小花を連ねる。池畔水辺に生え、北海道から九州、および朝鮮半島に分布する。名は、ドジョウをとったときに、この茎に刺し連ねて持つのに使ったのでいう。

[許 建 昌 2019年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドジョウツナギ」の意味・わかりやすい解説

ドジョウツナギ
Glyceria ischyroneura; manna-grass

イネ科の多年草。日本および朝鮮半島の温帯から暖帯にかけて分布し,溝,水辺および湿地に普通にみられる。茎の下部は節のところで曲り,上部は直立して高さ 50cmほどになる。葉は線形で軟らかい。初夏に,茎の頂部に長い円錐花序をなして多数の緑色の小穂をつける。各小穂には5~6個の花がつく。

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