ドムスアウレア(英語表記)Domus Aurea

デジタル大辞泉 「ドムスアウレア」の意味・読み・例文・類語

ドムス‐アウレア(Domus Aurea)

イタリアの首都ローマにある古代ローマ時代の宮殿遺跡。ラテン語で「黄金宮殿」を意味する。紀元64年から68年にかけてローマ皇帝ネロにより建造。広大な敷地に、機械仕掛けでドーム型天井が回転する建物や、人工の川や池がある庭園などが造られた。ネロの死後、2世紀初頭の火災により焼失し、後の皇帝により埋められたり公共用地に転用されたりした。15世紀に地中に埋もれた宮殿の一部が発見され、残された壁画彫刻ルネサンス期の芸術家に大きな影響を与えたとことで知られる。ネロ帝の黄金宮殿。

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改訂新版 世界大百科事典 「ドムスアウレア」の意味・わかりやすい解説

ドムス・アウレア
Domus Aurea

64年の大火の後,ネロ帝がローマに造った宮殿。〈黄金の家〉の意味。建築家はセウェルスSeverusとケレルCeler。現在コロセウムの建っているあたりにあった,人造湖を中心にした田園風庭園にとりまかれた大宮殿で,その敷地は50haとも150haとも推測される。68年ネロの死後,未完成のまま残され急速に消滅していった。現在トラヤヌス浴場の下にある,正面約220m(当初は約360m)の一棟だけがよく知られている。これはローマのコンクリート構造がモニュメンタルな建築に採用された初期の実例として,建築史上重要な遺構である。
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世界大百科事典(旧版)内のドムスアウレアの言及

【アラベスク】より

…一方,ルネサンス時代にローマで古代遺跡が発掘されるに及び,ヘレニズム期,古代ローマ時代のグロテスク文様もまた,アラベスクの概念に含められた。古代遺跡の多くは,たとえばネロのドムス・アウレア(黄金の家)の場合のように地下に埋もれて洞窟(グロッタ)の観を呈していたので,その壁面装飾の文様をグロテスクと呼んだのである。しかしこのグロテスク文様は,一般に流麗な葉状の曲線文様の中に花冠,鳥獣,人体をからませた綺想風の文様で,アラベスク文様と類似しているところから,イタリア語でアラベスコとも呼ばれた。…

【ローマ美術】より

…ただし,建築モティーフはさらに幻想的性格を強くし,カタコンベの壁画に近い様式に至ったことは推定できる。画家の名は,前300年ころのファビウス・ピクトルFabius Pictorやネロのドムス・アウレア(64ころ)を装飾したファブルスFabullusらしか伝わっていない。後者の壁画は16世紀初頭ラファエロに影響を与え,グロテスク形式の装飾壁画を生むことになる。…

※「ドムスアウレア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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