ナイトシフト(英語表記)Knight shift

化学辞典 第2版 「ナイトシフト」の解説

ナイトシフト
ナイトシフト
Knight shift

金属に外部磁場Hを加えると,伝導電子Hに比例した磁気モーメントをもち,これが原子核内部磁場をつくる.したがって,金属の核磁気共鳴吸収の周波数基準の周波数からずれる.これは,W.D. Knight(1949年)によって発見されたので,ナイトシフトといわれる.ナイトシフトの大きさはHに比例する.遷移金属などでは,外部磁場によって磁気分極したd電子が,内殻電子を磁気分極して,分極された電子が負のナイトシフトを与えることがある.[別用語参照]化学シフト

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナイトシフト」の意味・わかりやすい解説

ナイトシフト
Knight shift

常磁性金属における原子核磁気モーメントが共鳴を起す磁場は,反磁性絶縁体中における値と比べて,絶対値にして約 0.1~3%程度異なる。この違いを発見者 W.D.ナイトにちなんでナイトシフトと呼ぶ。このナイトシフトは,金属中の伝導電子が核電荷の強い引力的なポテンシャルにより核スピンとの相互作用を介して核の位置につくる内部磁場に起因している。通常のs状態をとる伝導電子ではナイトシフトは正であるが,電子がd状態をとる遷移金属では負のナイトシフトを示すものが多い。また,遷移金属では電子の軌道磁気モーメントによるナイトシフトもある。

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法則の辞典 「ナイトシフト」の解説

ナイトシフト【Knight shift】

金属中の原子核の核磁気共鳴周波数が,絶縁体中にある同じ原子核の共鳴周波数より著しくずれを起こす現象.これは金属中の伝導電子がスピン偏極を起こした結果,余分な磁場の影響が原子核に及ぶ結果である.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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