ナウキャスト(読み)なうきゃすと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナウキャスト」の意味・わかりやすい解説

ナウキャスト
なうきゃすと

気象庁降水竜巻発生確度、雷活動度の分布について、1時間先までの予測を発表する気象予報システム。ナウキャストは、英語の現在nowと、予報forecastを組み合わせた造語である。短時間予報ともいう。気象庁では、250メートルか1キロメートル(竜巻発生確度については10キロメートル)四方格子に区分けしたエリアの予測を、5分あるいは10分ごとに配信している。1日3回発表される一般的な天気予報などとは異なり、狭い地域ごとに詳細な気象予報を短い間隔で得られるため、日常生活で当座の行動の参考となる予報を得られる。また、大雨のときには、防災対策や避難行動をとるために有効な情報を得ることが可能である。予測情報は国際気象通報式にのっとったデータ形式や画像データとして配信されており、気象庁のホームページや民間事業者のコンテンツサービスなどを利用して見ることができる。

 気象庁は、2004年(平成16)からレーダー観測結果をアメダスなどの雨量計データをもとに補正し、降水の強さとその分布を予測して提供する降水ナウキャストの運用を開始した。続いて、2010年から竜巻などの激しい突風の発生確度に関する竜巻発生確度ナウキャストと、雷の激しさや発生可能性に関する雷ナウキャストの提供を始めた。さらに、2014年からは、局地的な大雨の観測精度を向上させるため、気象ドップラーレーダーの観測値に加え、気象庁と国土交通省、地方自治体が保有する全国の雨量計のデータ、ウィンドプロファイララジオゾンデによる高層観測データ、国土交通省のXバンドMPレーダーXRAIN)などを活用した高解像度降水ナウキャストを運用している。

 提供される予想値や解析値は以下の通り。(1)降水ナウキャスト 1キロメートル格子による、10分ごとの降水量と5分ごとの降水強度の予想値。(2)高解像度降水ナウキャスト 250メートルから1キロメートル格子による、5分ごとの降水量と降水強度の解析値と予想値。(3)雷ナウキャスト 1キロメートル格子による10分ごとの雷活動度。(4)竜巻発生確度ナウキャスト 10キロメートル格子による10分ごとの竜巻発生確度。(5)画像データ 250メートルから1キロメートル格子による5分ごとの、高解像度降水ナウキャスト、雷ナウキャスト、竜巻発生確度ナウキャストの画像データ。

 なお、高解像度降水ナウキャストとして提供される250メートルの解像度の予測は、30分後までであり、これ以降の1時間後までは、同じアルゴリズムで予測された1キロメートルの解像度で提供される。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナウキャスト」の意味・わかりやすい解説

ナウキャスト
nowcast

現在(ナウ)と予報(フォーキャスト)を組み合わせた造語で,数時間先までの予報の意。気象レーダアメダスなど,現在の気象資料などをもとにして,日本ではおおむね 1時間先までの予報を行なっているが,アメリカ合衆国では最大 6時間先までの予報をナウキャストということもある。(→雷ナウキャスト降水ナウキャスト竜巻発生確度ナウキャスト

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