ナガシンクイ(読み)ながしんくい

改訂新版 世界大百科事典 「ナガシンクイ」の意味・わかりやすい解説

ナガシンクイ (長心喰)
branch and twig borer

甲虫目ナガシンクイムシ科Bostrychidaeの昆虫総称。世界から400種余りが記録されているが,主として熱帯に分布する。日本からは約10種が知られる。幼虫には木材,竹材に穿孔(せんこう)するものが多く,家屋や家具がしばしば加害される。また一部の種は穀類などの食品を加害する。成虫の多くは褐色または黒色円筒形。背面から見ると胸部は頭部を覆い,前半部に同心半円状に小突起列がある。触角は先の3~4節が櫛(くし)形,または幅広い。幼虫は白色円筒形で胸部が著しく太く,胸脚を有する。コナナガシンクイRhizopertha dominicaは体長約3mm。世界に広く分布し,穀粉をはじめ乾いた植物質のものを加害するので,英名はlesser grain borerといい,また第1次世界大戦時にオーストラリア小麦によって広がったことからAustralian wheat weevilとも呼ばれる。チビタケナガシンクイDinoderus minutusは体長3mm内外で竹製品を食害し,オオナガシンクイHeterobostrychus hamatipennisは体長8.5~15.5mm。ラワン材をはじめ各種の南洋材に穿孔する。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナガシンクイ」の意味・わかりやすい解説

ナガシンクイ
ながしんくい / 長心喰虫

昆虫綱甲虫目ナガシンクイムシ科Bostrichidaeの昆虫の総称。世界各地に産するが、熱帯域など暖地の森林地帯に多く、数百種が知られており、日本にも13種の記録がある。体長2~50ミリメートルであるが、小形の種が多い。体は円筒形で頭は下向きに前胸にはまり、前胸は背面前部が丸く張り出し、顆粒(かりゅう)や突起が並び、キクイムシに似ている。しかし触角は先端3節が内側に片状に伸び、脚(あし)の跗節(ふせつ)は5節である。枯れ木や枝に孔(あな)をあけるものが多いが、衰弱した木にもつき、タケナガシンクイ属Dinoderusのようにタケに孔をあけるもの、コナナガシンクイRhizopertha dominicaのように貯蔵穀類の害虫とされるものもある。また、フタトゲナガシンクイSinoxylon japonicumのように電話ケーブルの鉛被に孔をあけ絶縁不良の原因をつくるものもある。幼虫は白くて肉質、C形に体を曲げ、頭が小さく、胸が大きく、材中にすみ食害する。ヒラタキクイムシ類はしばしばこの科の亜科とされることがある。

[中根猛彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナガシンクイ」の意味・わかりやすい解説

ナガシンクイ
Bostrychidae

甲虫目ナガシンクイ科の昆虫の総称。円筒形の甲虫で,家具や建築材の害虫が多い。体長2~50mm。頭は下向きで前胸背にはまり,上からは見えない。前胸背は僧帽形で,粒状ややすり状の突起が並ぶ。キクイムシに似るが,触角は先端の3節が内側へ広がり,また肢の節が5節あることで区別される。幼虫はコガネムシ型で白く肉質,体を曲げており,頭が小さく,眼がなく,胸が大きい。枯れ木や枯れ枝に穿孔するものが多いが,衰弱した木につくこともある。熱帯,亜熱帯に多く,日本からも十数種が知られ,タケを食害するチビタケナガシンクイ Dinoderus minutus,電話ケーブルなどの被覆に穿孔するフタトゲナガシンクイ Sinoxylon japonicum,貯穀類の害虫とされるコナナガシンクイ Rhizopertha dominicaのような害虫もある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android