ナギナタコウジュ(英語表記)Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hylander

改訂新版 世界大百科事典 「ナギナタコウジュ」の意味・わかりやすい解説

ナギナタコウジュ
Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hylander

山地道端草地に生えるシソ科一年草。茎は直立して分枝し,四角形で高さ30~60cm。葉は対生し,卵形で長さ3~9cm,縁には鋸歯があり,0.5~2cmの葉柄がある。9~11月ごろ枝先に花穂をつけ,一方に向いて淡紫色の花をつける。花穂は扁円形の苞で覆われ,花は苞の間から出て,花冠は筒状で先端部に毛があり,4本のおしべが外につき出す。エルショルチアケトンelsholtziaketoneやナギナタケトンnaginataketoneという精油を含んでおり,葉や茎をもむと強い芳香がある。花期に全草を干したものを香薷(こうじゆ)といって,解熱,利尿剤など薬用にすることがある。和名は花穂の形がなぎなたの形に似ていることによる。アジアの温帯に広く分布する。フトボナギナタコウジュE.argyi Lév.var.nipponica(Ohwi)Murataは葉が広くて穂も太く,苞は扇状円形で,本州の中部地方から西と九州に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナギナタコウジュ」の意味・わかりやすい解説

ナギナタコウジュ
なぎなたこうじゅ / 薙刀香薷
[学] Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hylander

シソ科(APG分類:シソ科)の一年草。茎は四角形で高さ30~60センチメートル、まばらに軟毛があって分枝する。葉は対生し、狭卵形で短い柄があり、もむと独特の香気がある。9~11月、上部の枝先に細長い花穂をつくり、小さな淡紅紫色花を一方向に密につける。名は、この花序の形が薙刀(なぎなた)の形に似ていることに由来する。山地の道端や草地に生え、アジアの温帯からヒマラヤ、旧ソ連地域に広く分布する。近縁のフトボナギナタコウジュは葉は広くて花序も太く、宮城県以南の本州、四国、九州に分布する。

村田 源 2021年9月17日]


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百科事典マイペディア 「ナギナタコウジュ」の意味・わかりやすい解説

ナギナタコウジュ

シソ科の一年草。北海道〜九州の山野にはえ,東アジアに広く分布する。高さ30〜60cm,全草に強いかおりがある。葉は対生し長卵形で,長さ5〜8cm,縁には鋸歯(きょし)がある。秋,太薙刀(なぎなた)のように反り返った花穂を出し,淡紫色で長さ5mmほどの唇形(しんけい)花を一方に向けて開く。全草を乾燥させたものを香【じゅ】(こうじゅ)といい薬用とする。

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